「NEMU RESORT(ネムリゾート)」(志摩市浜島町)で11月5日、日本の観光発展について考える「常若セミナー in伊勢志摩」が開催された。主催はホテルなど観光関連施設のホームページ作成業務などを行うキャブ(東京都千代田区)。
同セミナーは、ウィズコロナ時代のMICE開催の実証実験も兼ね全国から観光業者約50人が参加。MICEとは、企業の会議(Meeting)や報奨・招待・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会などが行う国際会議(Convention)、展示会・見本市・イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取った総称のことをいう。
当日は、三井不動産ホテルマネジメント(東京都中央区)社長の雀部優さんによる基調講演「ラグジュアリーリゾートの潮流を探る」に始まり、第1部と第2部に分けて地元の観光関係者によるパネルディスカッションを行った。
パネルディスカッションのテーマは、第1部が「伊勢志摩のカギを握る持続可能な観光発展の取り組みとは」、第2部が「世界の美食家を魅了した『食』」。パネリストは、第1部が、旅館おかみの江崎貴久さん、ホテル支配人の田中紀子さんと惣明福徳さん、第2部が、ホテル料理長の山﨑俊和さんと北村光吉さん、若園一志さん。コーディネーターは第1部・第2部とも宿泊予約サイト「Relux(リラックス)」などを運営する「Loco Partners(ロコパートナーズ)」(東京都港区)副社長の塩川一樹さんが務めた。
キャブ社長の苦田高志さんは「参加者には、ワクチン接種証明書の提示か、ワクチン未接種者にはPCR検査キットを送付し検査してもらい陰性の人に参加してもらうように参加条件をつけた。2年間の先の見えないトンネルの中、これからの観光・宿泊業界はコロナ対策と共存していく時代になる。今回のセミナーの開催が、MICEの開催や観光業界に差す新たな明るい兆しになれば」と話す。
ネムリゾートを運営する伊勢志摩リゾートマネジメント(鳥羽市鳥羽)セールス&マーケティング部の濱岡佐代美さんは「MICEは参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べて消費額が大きいことから、MICEの誘致には積極的に取り組んできた。2018(平成30)年には約10件のMICE関連の予約があったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年には開催数がゼロになった。コロナ対策として2人掛けテーブルを1人掛けにするなど密を避けられるような対応をしている」と説明する。
現在、伊勢志摩地域へのMICE誘致を推進する伊勢志摩観光コンベンション機構(伊勢市二見町)が「伊勢志摩リゾートMICE 推進協議会」を設置。2016(平成28)年主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」の開催地となった伊勢志摩地域でのMICE誘致を推進し、参加者数100人以上の主催団体には5万円から40万円のMICE開催助成金を給付している。
同機構によると、同助成金を受けた団体は、2015(平成27)年から2019年までの間に62団体で、延べ約7万5000人が伊勢志摩を訪れたという。2020年度は1団体の約400人だけだった。
同機構MICE担当者の浦川健二さんは「2020年度は17件のキャンセルがあった。今年度は、10件の予約があり5件がキャンセル。4件は開催されたがうち2件の医学系会議は、オンラインとリアルでの『ハイブリッド会議』となり、いずれも参加者を予定の2割ほどに減らし規模を縮小した。現在は、緊急事態宣言が解けてコロナが落ち着いてきたこともあり、医学系の会議についての問い合わせは増えている。助成金の申請は11月末までなので、MICE開催を検討している団体はぜひ伊勢志摩を選んでほしい」と呼び掛ける。