志摩市在住の大形直樹さんの写真展「磯部の御神田(おみた)」が10月1日、伊勢和紙ギャラリー(伊勢市大世古)で始まった。
磯部町穴川出身の大形さんは、元中学校校長で現在は志摩市文化財調査委員などを務める郷土史家・写真家。伊勢神宮・内宮別宮「伊雑宮(いざわのみや)」(志摩市磯部町)の御田植祭について、磯部町の9地区(五知、上之郷、沓掛、山田、下之郷、穴川、迫間、築地、恵利原)が7年に1度の輪番で祭典奉仕を行い、継承する様子を9年以上にわたって取材し記録した。同展ではその記録写真の一部を展示する。
同祭は、国の重要無形民俗文化財の指定を受け、香取神宮(千葉県香取市)と住吉大社(大阪市住吉区)の御田植祭と共に「日本三大御田植祭」の一つに数えられている。鎌倉時代に書かれた伊勢神宮の「神道五部書」の一つ「倭姫命世記(やまとひめのみことせいき)」に、第11代垂仁天皇の皇女・倭姫命が伊勢神宮に納める神饌(しんせん)を探し求めて志摩を訪れた時、昼夜鳴く1羽の白真名鶴が稲穂をくわえていた「白真名鶴伝説」「鶴の穂落とし伝説」に由来。1289年に書かれた「伊雑宮年中行事遷宮記」に同祭のことが記されていることから700年以上前から続く祭典として地元の人たちが今日まで守り続けている。1871(明治4)年から約20年間、明治政府の「寺社領上地令」により神領地、御料田を没収されたため中断したが、1891(明治24)年に復興してからは戦時中も中断することなく続けられてきた。
昨年6月に自費で「コロナ禍の伊雑宮の御田植祭」を出版した大形さんは「2020年の祭典は、新型コロナウイルス感染症拡大のため中止せざるを得ない状況であったが、それでも苦渋の決断を行い、祭典に関わる磯部の御神田奉仕会の奉仕者14人だけで祭りを行った。同展を通して磯部の人たちの御田植祭への思いを受け取ってもらえれば」と話す。
同展は、1899(明治32)年から伊勢神宮の御神札(おふだ)に使用する伊勢和紙を奉製する大豐和紙工業(同)内にある築1930(昭和5)年の木造建築の同社事務所2階のメインギャラリーとサブギャラリーを会場に、伊勢和紙にプリントした作品80点以上を展示する。
開館時間は9時30分~16時30分。日曜休館。今月31日まで。