富士山が宙に浮き上がっているように見える「浮き富士」「宙に浮く富士山」が12月19日の早朝、志摩市の海岸から見られた。
伊勢志摩から富士山まで直線距離で200キロ以上離れるが、気温が下がる冬の早朝の、空気が澄んで水平線上に雲がない条件が重なった時、日本最高峰・高さ3776メートルの富士山は観測できる。日中は大気中のスモッグやちりが影響し、ほとんど見ることはできない。
海の上に浮いたように見える「浮き富士」を観測できるのは、日本で唯一、志摩市と鳥羽市の一部の海抜0メートルの地点からだけで、近年、富士山を撮影するカメラマンが冬の伊勢志摩に泊りがけで訪れるようになった。「浮き富士」は、志摩半島沖を流れる水温が温かい黒潮の影響が大きく、特に気温が下がる冬場に海水と水面近くの空気との温度差が大きくなることで光が屈折して起こる「蜃気楼(しんきろう)」の一種「浮島現象」による。
「浮き富士」が観測できるのは、志摩市が「安乗崎公園」(阿児町安乗)、「国府浜(こうのはま)」(国府)、「浅浜」(甲賀城ノ崎)、「市後浜」(志島)、「須場浜」(大王町波切)、鳥羽市が「千鳥ケ浜」(相差町)、「鎧崎(よろいざき)」(国崎町)。直線距離で約206キロ離れる「須場浜」からが観測最遠の地になる。
この日は、伊勢志摩から富士山を撮影する写真家の泊正徳さんが安乗漁港の灯台を入れた「浮き富士」の撮影に成功した。泊さんは「5時30分ごろ現場に到着しシャッターを切る。水平線に薄い雲があり富士山の姿はない。少し待っていると雲が消えるかもしれないと約30分期待をしながら待つことに。6時過ぎ再びチャレンジすると頂上付近に雲はあるものの、富士山の姿が見え始めた。その後富士山の全容が現れ、夢中でシャッターを切った。何事も諦めずにチャレンジすることの大切さを富士山から学んだ」と話す。