年末年始に伊勢神宮の外宮(げくう)内宮(ないくう)の境内で参拝者に足元の明かりとなり暖を取ってもらおうと毎年行っているかがり火をたく「庭燎(ていりょう)奉仕」が今年も大みそかから元旦にかけて、「日本青伸会」(東京都千代田区)の会員らによって行われた。
同会は、伊勢神宮の社殿などを新しく建て替える1953(昭和28)年の第59回式年遷宮で使う屋根材のカヤを栽培する場所を開拓するために1942(昭和17)年に結成された「神宮萱地造成奉仕隊」を元に、1943(昭和18)年に奉仕隊参加者約4000人で結成された「屋船会」を、その後改名し、1976(昭和51)年に社団法人、2012(平成24)年に公益法人となり活動する団体。昨年80周年を迎え、記念式典を行い、次の遷宮のためカヤの植樹も行った。
同会は、1945(昭和20)年から年末年始の「庭燎奉仕」を毎年欠かさず行い、今回も北は北海道から南は鹿児島までの会員約120人が、外宮の6カ所、内宮の8カ所のかがり火を、夜通し交代で見守った。今回の「庭燎奉仕」で78回を数える。
大みそかの18時に外宮、19時に内宮の大かがり火に火がともると、真っ暗だった神域が明るく、暖かくなった。神宮林の間伐材や倒木を切ったまきを会員が火の中に入れると、かがり火が大きく空に広がった。
同会4代目理事長の久本惠章(やすたか)さんは「戦後の混乱期に、度会郡小川郷村(現在の度会町川口)の約100万平方メートルの山を、延べ5万人以上の隊員が1年3カ月かけ、開墾からカヤの植栽に至るまでを遂行した先人たちが、勤労奉仕で培った『奉仕・友愛・忍耐・進取』の精神を後世に伝えようと『日本青伸会』は存在している。敗戦間もない荒廃の中から、大みそかの夜に伊勢神宮の神域を照らし続けてきた。今日まで貫いてきた『御萱地(おかやち)精神』を、いつまでも忘れないでほしい」と話す。