タイ王国のモンクット王工科大学ノースバンコク校(バンコク)に通う3年生約30人が1月6日、かつお節の製造販売を手がける「かつおの天ぱく」(志摩市大王町、TEL 0599-72-4633)のいぶし小屋を訪れた。
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伊勢志摩の観光名所としても知られる「大王埼灯台」を一望する絶壁の地でかつお節を製造する同社。1946(昭和21)年に建てられ国登録有形文化財の指定を受ける「いぶし小屋」で、切ったカツオを木のせいろに並べ、ウバメガシのまきのじか火で何度もいぶし、うまみと香りを付けるカビ付けを行う江戸中期から伝わる「手火山(てびやま)」製法で、今もかつお節を製造する。2016(平成28)年にあった伊勢志摩サミットを契機に同社のかつお節が注目を集め、多くの外国人が同社を訪れている。
同大で貿易や物流を学ぶ学生が、いぶし小屋に到着すると、かつお節の一番だしを試飲。その後、同社の天白幸明社長から、かつお節の製造工程や歴史、伊勢神宮との関わりなどについて説明を受け、日本の食文化について学んだ。最後に、土鍋で炊いた炊きたてのご飯に削りたてのかつお節としょうゆを混ぜただけの「おかかご飯」を試食し、学生たちは一様に笑顔を見せていた。
旅行を企画した「ワールドプロトラベル」(バンコク)のルンナパ・カンパヤさんは「タイの人にはカツオだしのうまみを認識するのは難しいかもしれないが、たこ焼きの上で踊っているかつお節は理解している。かつお節が神様と関わりがあり、日本人の精神性の基になっていることを学ぶことができた。ここはとても遠い場所だが、とても親切に深く教えてくれるので、日本人のルーツを知る場所として、遠くても来て見て知ってもらいたいと思いツアー企画に組み込むようにしている」と話す。
一緒に参加する同大のアチャリーヤ・ロブキット学長は「これまで日本の小さなことは気にしていなかったが、かつお節の話を聞き、とても大きな意味があることを学んだ。小さいのに大きな味。奇跡の料理だと思った」と感想を漏らす。
コロナ禍前の志摩市には、2018(平成30)年に約5.5万人、2019(平成31)年に約4.8万人の外国人が訪れた。志摩市観光課の宮﨑絵理子さんは「FIT(個人旅行)は、アメリカ・中国・香港・台湾などが多く、GIT(団体旅行)は台湾・フランス・シンガポールが多い。コロナ禍前に比べ、欧米からの個人旅行が増加傾向に。富裕層が多く利用する施設では滞在型の傾向がみられ、ツアー客は横山展望台(志摩市阿児町)に立ち寄るコースが多い。全体的には2019年と比較し7割程度回復。施設によっては同程度又は上回るところもある」と説明する。