伊勢神宮のお神札(ふだ)のご神体となる用材を神宮林から切り出す「大麻用材伐始祭(たいまようざいきりはじめさい)」が4月17日、伊勢神宮宇治橋前の森の中にある丸山祭場(伊勢市宇治今在家町)で行われた。
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「大麻(たいま・おおぬさ)」ともいわれる、神棚などに祭る伊勢神宮のお神札(ふだ)は、御真(ぎょしん)と呼ぶご神体を和紙で巻き中心に納める。御真は、切り出した木材を製材し半年間、風雨にさらしてヤニを取り、乾燥させ、厚さ約1ミリの木地に加工する。大麻が完成すると「大麻修祓式」ではらい、9月17日に行われる「大麻暦頒布始祭」で神社本庁が「頒布大麻」として47都道府県から集まる各神社庁長に渡す。全国の神社で氏子らが頒布する。伊勢神宮で直接参拝者に授与するのは「授与大麻」。伊勢神宮では「頒布大麻」「授与大麻」合わせて約1000万体を奉製する。
祭典は、おはらいの後、神様に神饌(しんせん)を奉納し、神様に用材を切り出す許しを請い、作業の安全を祈願する祝詞(のりと)を奏上。素襖烏帽子(すおうえぼし)姿の工匠(こうしょう)3人が神路山に向かっておのを3回振り下ろす。齊藤郁雄神宮少宮司ほか神職、職員、関係者ら約40人が参列した。
頒布大麻は、伊勢神宮への参詣者を全国から呼び込み案内などをしていた御師(おんし・おし)が平安時代の末期、新しい神札や暦を持って全国の崇敬者に頒布したことが始まりとされている。江戸時代後期の安永年間には、全国世帯の約9割(約480万戸)が大麻を受けていたという記録も残る。明治維新後の御師制度廃止により1872(明治5)年から、国の平安と全国の家庭の無事、国民一人一人の幸福を祈るお神札「神宮大麻」として、伊勢神宮から直接頒布されるようになった。