二見興玉神社(伊勢市二見町江)の特殊神事「藻刈神事(もかりしんじ)」が5月26日、夫婦(めおと)岩の沖合の船の上で行われた。
夫婦(めおと)岩の沖合700メートル先の海中に沈む猿田彦(さるたひこ)大神ゆかりの興玉神石(おきたましんせき)に生える藻草「無垢塩草(むくしおぐさ)」を刈り取る同神事。5月21日に行う予定だったが、悪天候のため本殿祭だけを執り行い、藻草を刈り取る「神石祭」は、この日に延期した。
金子清郎宮司ら4人を乗せた船には「澳魂祭禮(おきたまさいれい)」と書かれたのぼりを立て、しめ縄を張り巡らせ、祭壇を設けた。興玉神石のある海上を船で3周し、2拝2拍手1拝の後、神酒、御饌(みけ)を海中にささげ、海中に手鎌を入れ、藻草を刈り取った。
刈り取った藻草は神前に奉納した後、天日干しし乾燥させ、同神社の祓具(はらいのぐ)「無垢塩大麻(たいま)」になる。授与品の不浄祓(ふじょうはらい)守り「無垢塩草」(初穂料=300円)にも使われる。
興玉神石は、東西約240メートル、南北約120メートル、周囲約960メートル、高さ約7メートルの楕円(だえん)形をした平岩で、1854年12月23日・24日(旧暦11月3日・4日)に発生した安政の大地震「東海・南海地震」(32時間後に連続発生、推定マグニチュード=8.4)で、完全に海の中に沈んだという。
金子宮司は「船に乗り藻草を刈り取り、祓具にするのは全国でも当社だけ。刈り取った藻草はアマモ。アマモは海水を浄化する作用があることから、汚れを払うもの。『無垢塩大麻』は祈とうや祭典などでおはらい時に使う。コロナ禍の影響もあり、近年、授与品の『無垢塩草』を求める参拝者も多い」と話す。