
三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった神島(鳥羽市神島町)に、ネコが背中を向けて座っているように見える「猫岩」が海に浮かんでいる。神島で天然塩を作る寺田勝昭さんは「猫岩をきっかけに多くの人が神島に来てくれれば」と思いを込める。
鳥羽港の北東約14キロ、愛知県伊良湖岬の西方約3.5キロの伊勢湾口に浮かぶ神島は、周囲約3.9キロ、面積約0.76平方キロの有人離島。2022年2月末時点の島民は309人(男139人、女170人)。神島灯台や監的哨(かんてきしょう)跡、八代(やつしろ)神社、カルスト地形などの観光資源があり、今年1月14日に生誕100年を迎えた三島が描いた「潮騒」はこれまで5回映画化され、吉永小百合さんや山口百恵さん、三浦友和さんらも現地での撮影に臨んだ。
「猫岩」は神島港の北西、「鈴の浜」の前に浮かぶ岩で、腰をくねらせ尾を巻いたネコの後ろ姿のように見ることができる。さらに頭に見える部分の岩が海鳥の休憩地になっているため海鳥のシルエットがネコの耳のようになってリアリティーを増している。
寺田さんは「神島を案内していた時、その時の女性が『猫岩』と叫んだことで、初めて気がついた。18歳まで島で暮らしてきたが、それまで全く気がつかなかった。堤防沿いのテトラポッドには5匹くらいの野良猫がいるが、波打ち際で魚を取ったり、漁師から魚をもらったりして暮らしている。島の漁師は鈴鹿や伊良湖の港で魚を水揚げすることもあり、鈴鹿の白子港で魚を水揚げした時に、船の中に忍び込んだネコがその後、島猫になったと(漁師から)聞いている」と話す。
寺田さんは「2月22日はニャンニャンニャンで猫の日。猫岩や島猫がきっかけとなって神島が注目されれば」と期待を寄せる。