ワカメやメカブ、アオサ、ヒジキ、アラメなど多くの種類の海草・海藻が捕られてきた伊勢志摩地方だが、これまで捕られてこなかった褐藻類ホンダワラ科の「アカモク」は取ってこなかった。その「アカモク」に着目し、特産品として開発しようと志摩市商工会(志摩市阿児町鵜方)が本年度事業化に取り組んでいる。
昨年6月、地域力活用新事業∞(無限大)全国展開プロジェクト「志摩の里海・『完熟天然あかもく』三方よし型特産品開発事業」として委員会を立ち上げた。まずは、アカモクを冷凍・乾燥させたり、粉末に形状を変えたりしながら加工しやすいようにした。
同会事務局を担当する石野雅彦さんは「アカモクの藻場は、赤潮の原因となる窒素やリンなどの栄養分を吸収し赤潮の増殖を抑える働きを持つ。アカモクの藻場約1平方キロメートルで約5万人分の下水処理場の窒素除去率に匹敵する。アカモクの藻場を機能的に整備すれば海水の流れを穏やかにし、微小な浮遊物を海底に落とし、直射日光を遮って水温を安定させ、魚が卵を産んだり、餌を取ったりする住み処(か)に最適な海の環境を作ることも可能になる。さらに中国では古くから漢方薬の原料として重宝されるほどその主成分は有効で、フコイダンやポリフェノール、ミネラル、ビタミンKなどを多く含有し栄養価が非常に高く、低カロリーな海藻。ワカメなどと比較するとカルシウムは1.2倍、カリウムは1.6倍、鉄分に至っては5.2倍と驚くほど。アカモクを安定的に捕り、市場に需要をつくれば、これまで船のスクリューに絡んだりと漁業者から厄介者扱いされて『ジャマモク』と言われていたものがお金に生まれ変わり、消費者も食べることで健康になれば『三方よし』の特産品となる」と説明する。
同委員会では、全国販売可能となるいくつかの商品を加工業者などに依頼し試作品を作り、同委員会メンバーはもちろん、地元イベントや東京ビッグサイトで行われた展示会などに訪れた人たちに試食させ、その感想などを徹底してアンケート調査した。
開発された商品は、ご飯などにそのままかけて食べる「ぶっかけ磯とろろ」、魚の練り製品として魚麺にした「あかもく魚魚めん」、伊勢志摩産の黒豚の肉を使ったハンバーグでつなぎの卵の代わりにアカモクの粉末を使った「nonアレルギーハンバーグ」、アカモクの食感を梅風味のゼリーと重ねたプリン「健美プリン」、アカモクの粉末をつなぎに使ったロールケーキ「あかもくロール」の5品。
三重県水産研究所の竹内泰介さんは「今年、大手流通業者が全国のスーパーでアカモク商品の販売を開始する。4月には全国で初めて『アカモクシンポジウム』が開催される予定など、アカモクは全国的に注目されている」と話す。三重大学人文学部非常勤講師を務める吉村裕之さんは「まだまだアカモクのことを知らない人が多いが、将来必ず志摩の特産品として認められるようになるだろう。それにはブランド化が重要」と力説する。
同会は本年度の調査結果などを基に、来年度以降、認知拡大、需要喚起しながら実際に販売できるように事業を継続する。