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伊勢の「二軒茶屋餅角屋本店」、きなこ餅作り続けて450年

伊勢の「二軒茶屋餅角屋本店」、きなこ餅作り続けて450年。21代目社長の鈴木成宗さん

伊勢の「二軒茶屋餅角屋本店」、きなこ餅作り続けて450年。21代目社長の鈴木成宗さん

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 ついた餅の中にこし餡(あん)を入れてきな粉でまぶした「二軒茶屋餅」を製造販売する「二軒茶屋餅角屋本店」(伊勢市神久)が4月20日、「創業450年祭」を本店前で開いた。

【その他の画像】「二軒茶屋餅角屋本店」で創業450年祭

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 1575年、戦国の安土桃山時代、歴史に残る鉄砲戦とも言われる「長篠の戦い」で武田信玄を父に持つ武田勝頼軍と織田信長と徳川家康の連合軍が戦っている頃、伊勢湾から勢田川を上り海路で伊勢神宮を目指す参宮客に向け、旅の疲れを癒やし休息が取れるように茶屋を開き、きな粉餅を提供したのが同社の始まり。

 地名にもなっている「二軒茶屋」は、勢田川の船着き場に同社の「角屋」と「湊屋(みなとや)」の2軒の茶屋があったことから、そう呼ばれるようになったとされる。同所は山田(今の伊勢市駅周辺)と二見を結ぶ二見街道の中間にあり、交通の便が良い場所だった。1871(明治4)年大嘗祭(だいじょうさい)を執り行った翌年の1872(明治5)年5月25日には、明治天皇が西郷隆盛らと共にこの地から上陸し伊勢神宮を参拝している。

 同社は現在、「二軒茶屋餅」の製造販売のほか、18代目社長の鈴木藤吉さんが1923(大正12)年に始めた、みそ・しょうゆの醸造・販売、21代目社長の鈴木成宗(なりひろ)さんが1997(平成9)年に始めたクラフトビール「伊勢角屋麦酒」の醸造・販売の3つの事業を営んでいる。

 創業450年祭では、常滑市から市場常磐車囃子方(ときわしゃはやしかた)のメンバーによる笛や太鼓の伝統芸能、日本舞踊、伊勢音頭などが特設ステージで披露されたり、餅つきや餅まきなどの催しが行われたりして、多くの人でにぎわった。本店では、明治天皇がこの地から上陸したことをいつまでも伝えていきたいと毎月25日のみに販売している黒餡(くろあん)の二軒茶屋餅を販売。同商品を求める客の長い列ができていた。

 鈴木成宗さんは「450年もの長きにわたり会社が存続できたのは、先人たちのたゆまぬ努力と、これまで支えてくださった多くの人たちがいたから。このことを思うと、身が震えるような感動と感謝の念が込み上げてくる。太平洋戦争が勃発し国家統制により砂糖の供給が止まり、餅の製造ができなかった危機を救ったのは18代目が起こしたみそ・しょうゆ事業だった」と話す。

 「ビール事業も今では毎年最高売り上げを更新するほどに成長したが、立ち上げた当初はうまくいかず苦労の連続だった。2018(平成30)年、新工場の建設を進めビールの製造能力を高めようとしているとコロナ禍になり、再び苦難が続いた。現在は、インド、ベトナムでの生産準備をしているところ。二軒茶屋餅の方では100年後にも素朴なものとして、いつまでも多くの人に愛され続けるように事業を継承し、ビールの方では『伊勢から世界へ』を合言葉に、さらに世界に羽ばたいていきたい」とも。

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