松下政経塾(神奈川県茅ヶ崎市)と修養団(しゅうようだん)伊勢青少年研修センター(伊勢市宇治今在家町)が10月15日~17日、「神嘗祭(かんなめさい)特別講習会」を開いた。パナソニック(旧・松下電器産業)創業者の松下幸之助の思いが今もなお受け継がれている。
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松下幸之助や渋沢栄一らの支援を受け、同塾や企業など組織研修の場として活用されている同団体は、1906(明治39)年創立の文部科学省所管の財団法人。冬の伊勢神宮を流れる五十鈴川で身を清める「水行」、大人の自分、とらわれている自分を捨て幼心に立ち返る「童心行」などの精神訓練を3泊4日で行う「みがく講習会」は1963(昭和38)年から続き、現在1178回を数える。これまでに総数15万人以上が参加してきた。
参加者は15日、同塾研修局の金子一也局長による講話、16日にその年の新穀(初穂)を伊勢神宮へ奉納する初穂曳(ひ)き(川曳き)、童心に返りスキップをする「童心行」などを受講し、深夜22時に執り行われる由貴夕大御饌祭(ゆきのゆうべのおおみけさい)を奉観、17日に伊勢神宮内宮(ないくう)御垣内参拝をした。
同塾の高橋菜里さんは「5月に初めて伊勢神宮を参拝させていただいた時にはあまりピンとこなかった。建物だけを見たという感覚だったが、今回深夜の神嘗祭を奉観させていただき、現場を見て、松下幸之助さんが『現地現場主義』と言っている意味がなんとなくわかった気がした。3日間土砂降りの雨だったが、それでも周りの環境が変化しようとも粛々と行われている。どんなに環境の波に関わっても左右されないぶれない軸、変わらない営みがあるのだということを知り、日本という国が安定している。日本人の精神性の根幹のようなものがここにあるのだと感じた。一方で素直に、何も知らなかった自分が恥ずかしいと思った」と話す。
同塾研修局の金子一也局長は「松下幸之助さんは79歳で伊勢神宮崇敬会の会長になり、今年、新会長に孫の松下正幸さんが就任した。日本の伝統文化を守るにはお伊勢さんだということで81歳で修養団の顧問になり、真のリーダーを育成しようと1979(昭和54)年に松下政経塾を84歳で創立。創立以来38年間ずっと毎年一度は修養団でお世話になっている。日本で古来続いている伝統精神は世界に誇るべきなのに、日本人がその価値を忘れていると非常に危機感を募らせていた。幸之助さんのお伊勢さんへの思いを伝えていきたい」と話す。