「御塩殿(みしおどの、みしおでん)神社」(伊勢市二見町)で8月1日~3日、伊勢神宮に奉納する塩を焼く作業が行われた。
7月17日~27日、五十鈴川河口の海水と淡水が交じり合う場所にある約6600平方メートルの塩田「御塩浜」で、昔ながらの入浜式製法を使い、塩分濃度13~15度の「鹹水(かんすい)」が4斗たる(約72リットル)で28たるが出来上がった。
鹹水は御塩殿神社境内にある御塩汲入所(みしおくみいれしょ)の壺で保管し、御塩焼所(みしおやきしょ)の中に設置した直径約2メートル、深さ約15センチ、容量約126リットルの鉄の平釜で3日間昼夜交代でたき・煮詰め「荒塩」を作る。荒塩はにがりが自然に流れるよう麦と稲わらで編んだ俵に入れ保存する。
作業員の一人は「今年は期間中、晴天が続き例年以上に作業は順調だったが、平成30年7月豪雨など7月に雨が多く降り海水の塩分濃度が低かったため濃い鹹水が取れず苦労した」と話す。
荒塩は10月5日に同神社で「御塩殿祭」を執り行った後、「堅塩」に焼き固め、伊勢神宮で最も重要な祭典「神嘗祭(かんなめさい)」に間に合うよう奉納する。堅塩を作る作業は10月と3月の年2回。伊勢神宮ではこの堅塩を年間約200個(約162キログラム)使うという。
鎌倉時代に書かれた「倭姫命世記」には、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の鎮座地を求めて旅をしている倭姫命(やまとひめのみこと)にこの地の神・佐見都日女命(さみつひめのみこと)が「堅塩」を献上したと記されている。「伊勢新名所絵歌合」(1295年)下巻には二見浦での御塩作りの様子が描かれている。