伊勢神宮の専用水田「神宮神田(しんでん)」(伊勢市楠部町)で5月18日、「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」が行われた。
約10ヘクタールの内の約3ヘクタールの栽培面積を持つ神宮神田では、伊勢神宮の祭典で神饌(しんせん)として奉納され、また神饌の中の酒などの原料として使用するうるち米ともち米を栽培する。
同祭は、鎌倉時代から行われていたとされ、地元楠部町の「神宮神田御田植祭保存会」のメンバーが手植えするのが恒例。神宮神田の責任者で神宮技師の山口剛作長(さくちょう)が黄色の装束をまとい、祭典を進行する。山口作長が3束の早苗を水田に投げ入れると、2人の作丁(さくてい)と呼ぶ奉仕員がその早苗を丁寧に植えた。その後、子持帷子(かたびら)に烏帽子(えぼし)、黄色のたすきをかけた男性と菅笠(すげがさ)に白衣、赤いたすきをかけた女性合計20人が裸足になり横一列に交互に並び、笛や太鼓の調べを聞きながら、早苗を手植えした。
この日は、曇り空だったが、時折青空と太陽も顔を出し、田植えが終わるころには激しく雨も降った。早苗を植え終わると、手に竹扇を持った男10人が水田の東西に整列し、「ヤア」と掛け声を掛け合いながらイナゴを払う動作を行った。水田の中では大黒と恵比寿の絵が描かれた大団扇(ごんばうちわ)を持った2人が「団扇合わせ」を行いながら3回まわり、豊作を祈った。
場所を伊勢神宮摂社「大土御祖神社(おおつちみおやじんじゃ)」(同)に移動すると、「はえや、はえ、はえや、はえ」と掛け声をかけながら豊作を祈る「豊年踊り」が行われた。最初の「はえ」には「生える・早く大きくなれ」、後ろの「はえ」には「栄える」という願いが込められているという。踊りが終わると大団扇を破る「団扇破り」が行われ、参列者がうちわの紙片を取ろうと大団扇に群がった。うちわの紙片を神棚に供えると無病息災になるという。
6月24日には、伊勢神宮別宮「伊雑宮(いざわのみや・いぞうぐう)」(志摩市磯部町)で「御田植祭(おみた・おたうえさい)」が行われる。