伊勢神宮内宮(ないくう)参集殿奉納舞台で9月13日、中秋の名月を愛でる「神宮観月会」が開かれた。
毎年外宮(げくう)の勾玉(まがたま)池に浮かぶ奉納舞台で行われているが、2017年10月の集中豪雨による浸水被害の影響で「せんぐう館」(伊勢市豊川町)が休館中のため、今年も昨年に引き続き内宮で行われた。内宮で行われる観月会は2010年、2011年、2018年の計4回目。
神宮観月会は、1898(明治31)年に冷泉為紀(れいぜいためもと)神宮大宮司が伝えた冷泉流の作法に基づき神宮皇学館の学生が中秋の名月にあわせて校庭で和歌を詠んでいた催しを、1948(昭和23)年に外宮勾玉池で神宮観月会として行ったのが始まり。毎年全国から寄せられた献詠の和歌と俳句の秀作を披講し、雅楽の管絃(かんげん)と舞楽(ぶがく)を披露する。
浄衣(じょうえ)を着けた7人の歌人が冷泉流の作法に基づき短歌を読み上げ、次に1人の講師(こうじ)が短冊に書かれた俳句をそれぞれ読み上げた。今年の題目は「恋」だった。
最優秀賞となる特選には、福島県の大槻弘さんの短歌「父に添う 母に呼ばれし おぼろ夜の 菜の花畑の かの日恋しき」が、三重県の村田眞美代さんの俳句「あの恋は 螢ぶくろに しまひ置く」がそれぞれ選ばれた。
選者の岡野弘彦さんは「九十(ここのそぢ) なかばを生きて いよよ恋(こ)ひし わがふるさとの 望月の夜」、鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)さんは「星は月 月は星恋ひ 望の月」と詠んだ。
雅楽は、楽太鼓、楽琵琶(がくびわ)、楽箏(がくそう)、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)」などを16人が演奏する管絃「合歓塩(がっかえん)」を、舞楽は、萌黄色(もえぎいろ)の衣装に青地に白のうちかけ、高い鼻に鋭い目、口を固く結んだ表情でひげを蓄えた白色の人面に鳥の甲(かぶと)を被った舞人が腰に太刀、手に銀の鉾(ほこ)を持って舞う「貴徳(きとく)」がそれぞれ披露された。
この日は、野外に設置された舞台で行う予定だったが朝から小雨がぱらつき、奉納行事などが行われる内宮の参集殿で行われた。中秋の名月は、島路山の木々をほのかに照らし、流れる雲の合間から時に明るく美しく現れた。