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志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に 土壁塗りワークショップも

志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に(撮影=岩咲滋雨)

志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に(撮影=岩咲滋雨)

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 志摩市阿児町の竹内和彦さんと妻の千鶴さんが現在、昔ながらの「石場建て」の建築構法を使い石の上に住宅を建築している。

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 建築現場は、入り組んだリアス式海岸の英虞湾近くにある、約2800 坪の高台の森の中。地域の伝統建築の良さを大切にしている東原建築工房(志摩市阿児町立神)が施工を担当する。

 「石場建て」の住宅を新築するに至ったきっかけは、同敷地内に生命保険会社の支店長などを歴任した徳島県阿波市出身の猪子彌平(いのこやへい)さんの住居として1934(昭和9)年に建てられた築85年の「旧猪子家住宅」があり、その住宅の木造平屋建ての主屋と土蔵、門柱が「第二次世界大戦後に伊勢志摩国立公園となり、保養地としての利用が進んだこの地域の和洋折衷の建物の先駆け的な建造物」として2018(平成30)年3月27日に国の有形文化財(建造物)として登録されたこと。

 千鶴さんは「志摩地域の文化のプラットホームになればと、『旧猪子家住宅』の利活用のために、より自由なスペースの必要性を感じ、新たに寝泊まりも可能な建物を作ろうと考えた。せっかく作るのなら、古き良き建築構法を守ろうとしている東原さんにお願いしたいと依頼。実際に柱が立ち家の形を成してくると、やってよかったと満足している。これから竹を編んで土壁を塗ったり、もみ殻を屋根や床の断熱材に使用したりと地域の材料を有効に利用しながら、住むだけでなく、技術の伝承にもつながれば」と話す。

 しかしながら耐震偽装事件以降、今の建築物は、より多くの手続きが求められるようになり、石の上に柱が載っているだけで、建物と礎石との縁が切れている「石場建て」の家は、現在の建築基準法にはその位置付けがないに等しく、通常の確認申請でなく、限界耐力計算で構造安全性を証明し、構造適合判定の審査に合格することが求められるなど、新築するための条件が厳しくなっている。

 東原建築工房代表の東原達也さんは「2階建て以上の石場建てに必要な構造計算方法は手続きが煩雑だったり、計算できる人がいないため申請のハードルはさらに高い」と現状を説明する。三重県の建設開発課の担当者も「20年以上勤務しているが、三重県内で石場建ての建造物に関わったのはたった1度だけ」と打ち明ける。

 「木組み、土壁、石場建てなどの伝統構法の良いところは、その土地にある木材や材料を使いながらその土地の気候や風土に適応しやすい建物となること。昔の家や神社・お寺ではよく見かけるが、現在では石場建ての家を新築しようとする施主さんが少なく、伝統構法が途絶えようとしている。竹内さんには石場建ての良さに加え、その技術の伝承や人材の育成の大切さもご理解いただきとても有り難い。伝統構法の素晴らしさを理解してくれる人が一人でも増えれば」とも。

 11月17日~19日は、竹を編み、土をこねて壁を塗る「竹小舞・土壁ワークショップ」を行う。東原さんは「伝統構法に興味のある人や体験してみたい人は自由に参加していただければ。みんなで楽しく、昔ながらの土壁づくりに挑戦してもらいたい。簡単な昼食とおやつ付き。軍手と飲み物持参、作業可能な服と靴で来ていただければ」と呼び掛ける。問い合わせは東原さん(TEL 090-4466-2905)まで。

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