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三重・芦浜原発建設止めた実話描く書籍「原発の断りかた」 1カ月待たずたちまち重版へ

三重・芦浜原発建設止めた実話描く書籍「原発の断りかた」 1カ月待たずたちまち重版へ(写真提供=月兎舎)

三重・芦浜原発建設止めた実話描く書籍「原発の断りかた」 1カ月待たずたちまち重版へ(写真提供=月兎舎)

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 三重県の住民が中部電力芦浜(あしはま)原子力発電所建設計画を阻止するまでの体験をまとめた書籍「原発の断りかた ぼくの芦浜闘争記」が3月11日、2月22日の刊行から1カ月を待たず重版となった。

【その他の画像】「原発の断り方かた」著者の柴原洋一さん

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 著者の柴原洋一さんは1953(昭和28)年志摩市浜島町生まれ、伊勢市在住。1986(昭和61)年~1991(平成3)年、南島高校(度会郡南伊勢町東宮、現在閉校)に英語教諭として勤務しながら、芦浜原発建設反対運動に携わった。

 芦浜原発は、今の度会郡南伊勢町(旧南島町)と大紀町(旧紀勢町)の間にある芦浜に中部電力(愛知県名古屋市)が建設しようと1963(昭和38)年に発表したが、住民の反対運動によって2000(平成12)年に白紙になった。

 同書は、出版社「月兎舎(げっとしゃ)」(伊勢市馬瀬町、TEL 0596-35-0556)が年4回発行している季刊誌「NAGI(なぎ)」に2015(平成27)年61号から2018(平成30)年74号まで約3年半、計14回にわたって連載した「芦浜闘争私記」を1冊にまとめたもので、中部電力を初めとする原子力利権に絡む国や県と南島町民との物語を描く。

 南島町と紀勢町の住民は37年間、反対派と推進派に分かれ町が分断する苦しみを味わった。1996(平成8)年に南島町芦浜原発阻止闘争本部が、県民81万2335人の反対署名を集め、三重県知事に提出すると、それ受けて当時の知事・北川正恭(まさやす)さんが1997(平成9)年3月に、1999(平成11)年まで冷却期間を置くと表明した。

 2000(平成12)年2月22日に行われた県議会で北川さんが涙ながらに芦浜原発の白紙撤回を表明して、ちょうど20年になる日に、初版が発売された。2月24日には、「原発おことわり三重の会」(TEL 090-1099-1520)による芦浜原発白紙撤回20年記念イベント「三重県に原発がない理由(わけ)」が津リージョンプラザお城ホール(津市西丸之内)で開かれ、同会場でも同書を販売した。

 月兎舎編集長の坂美幸さんは「本のタイトルは『原発の断りかた』だが、中身は『命の守りかた』だと思っている。ふるさとの海、生まれた土地で暮らし続ける自由、そんな日常が原発によって奪われる理由はない。だから、命の本」と説明する。

 坂さんは「2月25日から本屋さんへ配本していると、すぐに追加注文をいただいた。3日目には足りないことに気付き、慌てて印刷会社に連絡した。すると2月28日までに発注すれば3月11日にでき上がると言われ、『東日本大震災発生の日にできるのなら』と、迷わず重版を決めた(1刷で2000部、2刷で2000部、計4000部)」と打ち明ける。

 「当時を知る南島町出身の人からは『この本には本当のことが書かれている』とメールをいただいたり、『涙が止まらなかった』と手紙をいただいたりと、読者からの感想が会社に数多く寄せられている。山口県山口市の本屋さんから注文をいただいたことには、柴原さんと2人でとても喜んだ。なぜなら山口県は、中国電力(広島県広島市)が上関原発(熊毛郡上関町)の建設計画で芦浜と同じように推進派と反対派で町が分断されているところだから。同書店からは『原発反対派への希望になる本だと客から聞き注文した』と言っていただいた。近くの書店で『原発の断りかた』ないですか?とリクエストしていただければ」とも。

 3月22日は「カフェめがね書房」(度会郡大紀町野原)で14時から、柴原さんによる発刊記念トークショーを開催する。

 価格は1,650円。四六判、220ページ。県内の主要書店、同社ホームページなどで販売する。

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