二見興玉神社(伊勢市二見町)の境内社「竜宮社」で6月24日、同神社の例祭と津波の教訓を後世に伝える祭典「郷中施(ごじゅうせ)」が執り行われた。
【その他の画像】船には「キュウリ、ナス、ミル、マツナ」の供物
海を守る神さまとして知られる綿津見大神(わたつみのおおかみ)を祭る竜宮社。同神社の前に広がる竜宮浜には2009(平成21)年7月15日~16日の深夜にウミガメが産卵をしに来たこともある。
毎年ほぼ満月となる「郷中施」は、江戸時代の1792(寛政4)年旧暦の5月15日にこの地区を大津波が襲い、民家約20戸が流されるなど大きな被害を受け、同神社の氏子らが隣人同士と助け合い施し合って水難を克服したことから、過去の大災害の教訓をいつまでも忘れないように、犠牲者の供養と再び災害が起こらないよう、毎年旧暦の5月15日に行われている。祭典では、昭和天皇の御製「天地(あめつち)の 神にぞ祈る朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」に合わせてみこが舞う「浦安の舞」が奉納される。
祭典終了後、宮司たちは竜宮浜に移動し、2人のみこが約80センチの木舟に「キュウリ(野菜)」「ナス(同)」「ミル(海草)」「マツナ(海浜性植物)」の供物を載せ、海に流した。供物には、語呂合わせで「(大津波を)急に(キュウリ)、見る(ミル)な(ナス)、待つな(マツナ)」の意味を掛け、子どもから大人まで理解できるように考えた先人たちの思いが詰まる。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け昨年同様に、感染拡大防止のため事前に町内に「時間をずらし分散して参拝して欲しい」と呼び掛け、参列者は氏子代表、区長らだけで行った。同神社茶屋地区責任役員の晝河(ひるかわ)智也さんは「昔から郷中施の時には仕事を休んで区で集まり、食事をしたりして祭りのことについて話し合っていた。核家族化や人口減の影響もあるが、今後も先人たちが残してくれた教訓を後世に残していけるように周知していきたい」と話す。