伊勢市在住の元高校教諭・橋本理市さん(83歳)が8月15日、志摩高校(志摩市磯部町)に通う生徒たちに両親や祖父母から戦争の話を聞き提出させたレポートを一冊にまとめた「志摩半島の太平洋戦争 58人の証言」を自費出版した。
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橋本さんは、宇治山田高校(伊勢市)、三重大学(津市)農学部を卒業後、高校教諭として、1960(昭和35)年~1968(昭和43)年まで上野高校(伊賀市)で農業と理科を、1968(昭和43)年~1980(昭和55)年まで志摩高校で、1980(昭和55)年~1998(平成10)年の退職まで伊勢工業高校(伊勢市)で、それぞれ英語を教えた。
退職から22年が経った昨年の秋、自宅の資料を整理していると、志摩高校で教えていた時に1年D組の生徒たちに夏休みの宿題として提出させたレポートが見つかり、読み返すと志摩地方ならではの戦争体験が書かれており、貴重な生の資料として残す価値があると考え、終戦(敗戦)記念日の8月15日に発刊できるように作業を進めていた。
同著には、戦時中は食べるものがなく、アラメやワカメなど志摩の海で取れる海藻をコメやムギと一緒に炊いて食べた話や、海水から塩を作った話、B-29が襲ってくると防空頭巾を被って防空壕に避難した話、阿児町甲賀にある防空壕は1キロほども掘ってあり、隠れるため以外にほかの地域へ移動するために掘られた通路の役割をしていた話、広島に原爆が落とされた1945(昭和20)年8月6日の翌日に広島に行った祖母の話、報道は負けているのに勝っていると嘘ばかりだった話、「武運長久」を祈願して兵隊を送り出す話など、1973(昭和48)年卒業生約90人のうちの58人分のレポートをできるだけそのまま掲載した。
橋本さんは「夏休み期間中の8月6日、9日、15日は忘れてはならない日であること。戦争を知らない世代が、戦争体験した世代から聞くこと。なぜ戦争をしたのか、誰が責任を取ったかのか。戦争について、二度と戦争を起こさないためにどうしたらいいか。自分の頭で考え行動してもらいたいと思い、課題を出した。今後さらに戦争を知る世代が少なくなっていく。伊勢志摩の子どもたちに戦争と平和、人間の命の尊厳について考える資料として活用していただければ」と話す。
橋本さんは「英語の教師として、『have』という文字を教えるのに『I have a pen』と『I have a dream』(マーチン・ルーサー・キング牧師の言葉)では教える深さが全く違う。ある時生徒がALTのアメリカ人教師に親愛を込めて、自分が英語を知っていることを伝えようと『Hey,this is a pen!』と叫んだことがあった。もし彼が『Our hope is peace!』とメッセージを込めて叫んでいたら、ALTの教師も同調していたかも知れない。言語教育について考える私の教材論である」とも。
B5判、全65ページ、表紙には折り鶴のイラストをデザインした。希望者には1冊送料込みで1,000円で販売する。問い合わせは橋本さん(TEL 0596-24-4562)まで。