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伊勢工業高校建築科の生徒、1年掛け伝統構法で作った土壁の破壊実験

伊勢工業高校建築科の生徒、1年掛け伝統構法で作った土壁の破壊実験

伊勢工業高校建築科の生徒、1年掛け伝統構法で作った土壁の破壊実験

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 伊勢工業高校(伊勢市神久)建築科3年生が1月6日、三重県林業研究所(津市白山町)で自分たちが作った土壁の破壊実験を行った。

【その他の画像】三重県林業研究所で土壁の破壊実験「こんなに歪んでも」

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 生徒たちは課題研究の授業で1年間、日本の伝統的な建築を学ぼうと4月に座学、5月に製材・墨付け、6月に木材加工、9月に木材を組み立て竹で編んで壁の下地を作り、10月に土壁塗りを行い、土壁を完成させた。同校卒業生の東原建築工房(志摩市阿児町)社長の東原達也さんが講師を務めた。

 この日は、パネルせん断試験機のある同研究所の協力を得て、耐久壁の仕組みや解析方法を学び、完成させた土壁の強度を測るため、横方向に押したり引いたりしながら段階的に圧力をかけて、どれくらいの強度があるかを実験した。同授業は、三重県の木材を使い、将来の建築士育成を目的に建築学科のある高校生を対象にした「三重の木造建築士育成推進講座」の一環でもあった。

 三重県農林水産部森林・林業経営課木材利用推進班の技師・河原賢さんが、生徒たちに、耐力壁実験の説明(どれくらいの荷重に対してどれくらい変形したか)や三重県の林業、木材利用、木造建築について解説。破壊実験の結果をもとにした荷重・変位曲線のグラフの作成など解析を行った。

 破壊実験で、最終的に約1トンの力を掛け、横に184ミリ引っ張った結果、土壁にはヒビやゆがみは若干出たものの、破壊せず耐えた。

 河原さんは壁の強さを表す「壁倍率」について、筋交いを入れた壁の壁倍率を片側だけの場合1.0、たすき掛けの筋交いが2.0、一般的な土壁が0.5などと説明した上で、実際の2回の破壊試験で1枚目の土壁の壁倍率が1.3、2枚目が1.56だったことから、地震力に対する必要な壁の長さが10メートルの場合に壁倍率の数値を元にして計算した実際に必要な壁の長さを計算させるテストなどを行った。

 河原さんは「耐力壁実験の結果、木材は破壊せずに粘る特性があるため、大地震が発生した場合、木の壁はすぐに破壊せず耐えているので、その間に人間が避難する時間を与えてくれる効果がある。また木は鉄やコンクリートと比べても軽くて強いため、家屋倒壊時の危険性が少ないなどのメリットがある。今回の破壊実験でみんなが作った土壁の壁倍率が1.3と1.56ととても強いことが証明された」と説明。

 生徒たちは「木の特性の説明を聞き、木の良さを再認識した」「実験の結果、土壁にヒビが入ったが、よく頑張ったと思った。簡単に修復できるメリットもあることが理解できた」「土壁を実際に作る経験ができて、また実験してその良さを理解した」などと感想を残した。

 東原さんは「生徒たちが制作した土壁は、建物を約20センチ傾かせても崩落ず、ひび割れを修復すれば十分使えるものだった。土壁にも地震などにも十分耐えうる耐力があること、被災時に命を守る時間を稼げること、被災後の生活復旧の可能性を実感できた」と話す。

 東原さんは「この1年、地域の風土や文化に育てられた伝統構法を通じて、数字には表せない価値や暮らしやすさを学んできた。情報過多の時代に、建築もスペックの数値や等級で語られることが多い中、偽装や隠ぺいのニュースも後を絶たない。涙目で自分たちの作ったものが壊れていく様子を見守る生徒たちの姿に、ものづくりの本質を学んだ気がする」と締めくくった。

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