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志摩の大工・東原大地さん、伝統構法で建築賞受賞 24歳棟梁、石の上に家を建てる

志摩の大工・東原大地さん、伝統構法で建築賞受賞 24歳棟梁、石の上に家を建てる

志摩の大工・東原大地さん、伝統構法で建築賞受賞 24歳棟梁、石の上に家を建てる

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 工務店「東原建築工房」(志摩市阿児町立神)の東原大地さん(当時24歳)が棟梁(とうりょう)として手掛けた住宅「志摩の小庭 いかだ丸太の家」(阿児町神明)が第40回三重県建築賞住宅部門会長賞に選ばれた。

【その他の画像】石の上に家を建てる伝統構法で建てた住宅「志摩の小庭 いかだ丸太の家」

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 1902(明治35)年創業で来年120周年を迎える「東原建築工房」。父の東原達也さんが4代目代表を務める。大地さんは、立神小学校、東海中学校を卒業し、伊勢工業高校建築科を2014(平成26)年に、ものつくり大学(埼玉県行田市)を2018(平成30)年に卒業。志摩市に戻りそのまま、家業を継いだ。現在25歳。

 国土交通省の「気候風土適応型プロジェクト2018」平成30年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)にも選ばれた同住宅は、志摩市阿児町の竹内和彦さんと妻の千鶴さんが2018(平成30)年に施工依頼したもので、入り組んだリアス式海岸の英虞湾近くの約2800坪の高台の自然豊かな森の中に建設。

 石の上に柱を載せる石場建てを用い、地元の土と稲わらを混ぜた土で壁を塗るなど、昔ながらの伝統構法で作り上げ、木材や基礎石、土壁の骨組みに使う竹、もみ殻を炭にして作った断熱材など資材も可能な限り、地元産、県産を使った。住宅名の「いかだ丸太」は真珠養殖盛んな志摩市において養殖用いかだの材料として供給可能でポピュラーな県産ヒノキの丸太を屋根材に採用した。24歳の大地さんが2020年に完成させた。設計は、M5(エムサンク)アーキテクト一級建築士事務所(愛知県北名古屋市)。

 受賞について三重県建設業協会(津市)は「地域文化や伝統技術の継承、建材の地産地消や環境負荷の低減、かつての『地域の結い』の精神にならい実施した住民とのワークショップなど、さまざまな取り組みを凝縮して実現させた意欲的な作品」と評価する。

 大地さんは「M5の六浦基晴さんに設計をまとめていただき、今回は施工側の視点で設計図書をよく読み、頭の中で組み立てながら臨んだ。棟梁として、自分だけでなく刻む人や建てる人全員が分かるように墨付けをする必要があったので、最初に軸組模型を作ることで誰が仕事に来ても理解ができるようにした」と説明する。

 大地さんは「伝統構法は日本の気候風土に根付いた構法だが、地域によってさまざまな構造や意匠があり、現行の一般住宅の構法と比べると、工業化することが難しい。建築基準法の影響もあり、伝統構法で新規で建てるのにも知識とやる気と周りの理解がないと厳しいのが現状。しかしながら、しっかりと建ててある日本の伝統構法の建物は100年以上も立ち続けて来た歴史と実績があるので、難しいからとか、データがないからとかの理由でなくすのはとてももったいない」と、伝統構法で新築する家がほとんどない現状を客観視する。

 大地さんは「『いかだ丸太の家』では丸太の小屋組みを見てほしい。丸太の形状を生かし、シザーストラスとした。墨付け加工が大変だったが、評価されてうれしい」とも。

 代表の達也さんは「多くの人の協力のおかげで『いかだ丸太の家』が完成した。効率化を優先する近年において、非効率かもしれないが、長い目で見たときの総合的なコストや人とのつながり、循環型社会を重んじて建てる昔ながらの伝統構法には、まだまだ可能性がたくさんある。賞を頂いたことで、伝統構法について注目され、継承者が増え、昔ながらの家の素晴らしさを知ってもらうきっかけになれば」とほほ笑む。

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