伊勢工業高校(伊勢市神久)建築科の1年生が11月20日、建築現場で活用されているIT技術「AR(Augmented Reality拡張現実)」について学んだ。
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地元IT企業「サイバーウェイブジャパン」(CWJ、神田久志本町)とシステム開発会社「菱友システムズ」(東京都港区)が協力して実現した出前授業。菱友システムズデジタルイノベーション部の石田新二さんが講師を担当し、ネーティブARとウェブARの違いや、実際にどのようにビジネスシーンで使われているか、建築現場での活用事例などを紹介。そのほか、同校3年生が教科書の平面図をCADでデータ入力した設計図を元にARで読み込ませ、その教科書の平面図をカメラでかざすとARによって作り出された立体的な建物が浮かび上がるように事前に準備するなどして、分かりやすく解説した。
石田さんは「今回紹介したARアプリは、スーパーゼネコンと呼ばれる大手建築会社は実際に使って作業を進めている。ある現場では基礎工事中に、実際に図面通りに施工されているかをARで確認したところ、高さが10センチ違っていることを見つけ、事前に確認することができた。ARが役に立ったという喜びを味わった」と説明する。
「誤差はマーカーポイントをチェックした後なら5ミリ程度とほぼ正確。5年ほど前では実用的なレベルではなかったが、アプリとデバイスの進歩によって今では建築現場には欠かせないツールとなっている」と話す。
同校建築科の加藤康孝教諭は「生徒たちはARの活用により平面で書かれているものが立体で浮かび上がることに驚きを感じていた。CADの授業は3年間あるが、ARのような最先端の技術を教えるのは難しく、教科書にも載っていないので、こういう機会を作っていただきありがたかった」と話す。
生徒の谷柚希さんは「今回の出前授業は、とても楽しく建築について学ぶことができた。これまでは頭の中で想像して3次元に変換していたが、ARによって平面図の軸組みがどのようになっているか、とても分かりやすく確認できた」とほほ笑む。
三重県教育委員会によると、文部科学省の教育カリキュラムでは、最先端の技術の習得、利用について、アプリや対応する機械を購入する予算が確保できないこと、日進月歩でアップデートされる技術をフォローアップすることがさまざまな面から困難であることなどを理由に、高校の授業で教えることができない。そのため、文部科学省も大学や企業との連携を推奨しているという。