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志摩市で能登地震支援報告 法の壁、900人分の「給食」を「昼食」で提供

志摩市で能登地震支援報告 法の壁、900人分の「給食」を「昼食」で提供

志摩市で能登地震支援報告 法の壁、900人分の「給食」を「昼食」で提供

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 1月1日に発生した能登半島地震の被災地域を支援するボランティア団体の報告会が3月23日、志摩市役所で開かれた。主催は志摩市教育委員会。

【その他の画像】志摩市で能登半島地震の被災地域を支援するボランティア団体の報告会

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 三重県内の災害ボランティアなどを支援する「みえ災害ボランティア支援センター」の山本康史さん、重機などを活用し被災地の復旧活動を行う技術系災害ボランティアネットワーク「DRT JAPAN」三重代表の山本俊太さん、まちづくり団体「楽笑(らくしょう)」代表の岩城裕子さんのほか、オンラインで、熊本支援チームから「竹あかり」で全国のまちづくり団体とネットワークを持ち震災時に支援活動を行ってきた池田親生さん、七尾市に支援物資などを送る物流拠点やボランティア受け入れ拠点を作った能登半島支援チーム代表の新田響子さん、宮城県東松島市で防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」の三井紀代子さん、三重大学医学部2年生で石川県出身の宮園翔伍さんらが活動報告を行い、被災地の能登町役場教育委員会の河崎恭子さんは、現地で発生する問題をどう解決していったかを説明した。

 既に現地で延べ30日以上活動しているという山本俊太さんは「被災地の人たちが復興させたいと思うエネルギーを感じるからこそ、われわれはモチベーションを維持して活動が続けられる。自立し復興できるように被災地の団体育成にも力を入れているが、今回の地震では人がいなくてそのエネルギーを感じない。1カ月くらいでめどが立つと思ったが、ゴールが一緒に動いていく感覚。3カ月たっても一向に終わらない。僕は土木作業をしているとは思っていない。福祉の一端としてこの任務に就いている。あくまでも人に寄り添い被害に遭った人の笑顔のためにやっている。諦めないで復興させよう」とエールを送る。

 岩城さんたちは能登町の子どもたち約900人に温かいスープや汁物を、と毎日炊き出しを行った。「河崎さんから900人分の給食を作ってほしいと頼まれた時に、『いいよ』と明るく返事をしたものの、900人分がどれくらいの量なのかもあまり想像せず引き受けたが、断ることなどできる状況ではなかった」と打ち明ける。

 「いざ、給食をとなると、学校給食法という法律が壁になり何もできないことになった。子どもたちに温かい食事をどうやって提供できるかをみんなで考え、河崎さんが教育長とかけ合い、給食ではなく昼食として提供するならと許可を得た。それからはみんなで手分けして野菜を切り、できるだけ具だくさんで、栄養価が高く、おいしく、温まるものを、と作業を分担して取り組んだ。災害時、学校の再開と給食をどう両立していくのかという問題について、もっと国や県で議論し柔軟に対応できるようにしていかなければいけないと思う」と話す。

 河崎さんは「当時、断水し5つの調理場はどれも使用不可能で、能登町の備蓄していた食料がなくなり、学校の備蓄分も避難所で全部使ってしまったため、食べるものがなくなっていた。1月22日に学校再開を決めたが、給食をどうやって提供しようか、頭を抱えていたところに、岩城さんにわらにもすがる思いで相談したところ、『いいよ』と言ってもらえた。岩城さんたちが作ってくれる昼食で、日に日に子どもたちが元気になっていった。その間に、調理場を掃除し3月18日から使えるようになった」と当時を振り返る。

 池田さんは「地域への熱い思いを持った仲間が全国にいる。東日本大震災や熊本地震での経験を生かし、仲間たちと共に発災後すぐに動くことができた。支援したい人の熱量が高い時に物資を受け入れること。長期支援していくために被災地で動ける人が有償でボランティアできる仕組みを作ること。地域の人たちが自分たちの地域は自分たちで守るために地元に活動団体を作っていくことが大切」と話す。

 熊本支援チームの芹田香乃さんは「私たちができるのは、食材を切って届けてくれた全国の人たちの思いと共に、料理を作って元気を届けること。だから現場では疲れて元気がないスタッフは現場に行かせないで元気なスタッフを行かせるように心がけた」と振り返る。

 山本俊太さんは「僕たちが今行っている重機による公道のがれき撤去などは、法律上はグレーな部分が多いのも事実。地元の土木工事事業者のことも考えると、やりすぎることは良くないと考えている。それでも誰かがやらなければ復興していかない」。山本康史さんは「もう、(災害支援に)行こうよ。人がいない被災地は初めて」。岩城さんは「手伝いをしてくれるボランティアは切実に足りていない。中長期で協力してほしい。気軽に連絡してほしい」と呼びかける。

 会場では、被災地の記録撮影を担当したプロカメラマン・加藤直人さんの写真も展示した。

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