伊勢神宮の専用水田「神宮神田」(伊勢市楠部町)で4月2日、一年の耕作始めに当たる「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」が行われた。
同祭は、童男(どうなん)と神職らが神田奥の「忌鍬(ゆぐわ)山」に入り、麓にある山口祭場で山の神に忌鍬(ゆぐわ)がうまく出来上がるように祈る「山口祭」を行い、童男が山に入るための草を刈る所作を行う。その後、山頂まで登り、木の神に鍬の柄となる木を切ることの許しを請う「木本祭(このもとさい)」を行い、童男がイチイガシの木を切って鍬の柄を作る。鍬が完成すると禰宜(ねぎ)以下の奉仕員は、「まさきのかづら」と呼ぶテイカカヅラのつる草を円形に編んで烏帽子(えぼし)に飾り下山する。童男には、三重中学校1年の千秋季誠(すえなり)さんが選ばれた。
神田のそばに作られた祭場に神饌(しんせん)を供え、田の神を祭り、祝詞を上げると、続いて黄色の装束をまとった神宮技師・作長の山口剛さんが、完成したばかりの鍬を持ち、水田に向かって左右正面に3回耕す所作を、正面、西、東の計3回行う。続いて禰宜(ねぎ)から作長に「忌種(ゆだね)」と呼ぶ清浄な米の種が手渡され、作長はそれを白装束姿の作丁(さくてい)と呼ぶ奉仕人に振り分け、古来歌い継がれている御田歌(みたうた)「天鍬(あめくわ)や 真佐岐(まさき)の蔓(かずら)笠にきて 御田(みた)うちまわる 春の宮人」を唱和しながら作丁2人が神田に種をまく。
種をまき終わると作長が禰宜に報告し、水田の前に2人が移動すると種が無事にまかれたことを確認。久邇朝尊(くにあさたか)大宮司をはじめ、神職や地元関係者ら約60人が参列し、一連の祭典を見守った。
神宮神田の総面積は約10ヘクタール、神田の作付面積は約3ヘクタール。祭典用水田の面積約862平方メートル。神田には神宮の祭典で使う新米のほか餅や酒の原料用として、うるち米ともち米のほかに保存用品種合わせて十数種の米を作付けする。育てられた早苗を元に5月11日、「神田御田植初(おたうえはじめ)」が行われる。