
2033(令和15)年に予定している第63回神宮式年遷宮の準備を進めるための神宮司庁内の組織「神宮式年造営庁」が1月1日に発足し、ご用材を切り出し作業の安全を祈願する式年遷宮最初の祭典「山口祭」と「木本祭(このもとさい)」が、5月2日に行われることが決定した。
神宮式年遷宮は、社殿を建て替え、装束や神宝を新調して、ご神体を移し変える大祭のこと。1回目は西暦690年、持統天皇の時に行われ、以来戦国時代に一時途絶えたが約1300年にわたって続けられている。前回の第62回神宮式年遷宮ではご神体を新しい正殿へ移す「遷御(せんぎょ)の儀」は2013(平成25)年10月に行われた。
ご用材を切り出す山を「御杣山(みそまやま)」と呼び、どの山から切り出すかの決定と、「山口祭」と「木本祭」の日時の決定は天皇陛下によるもので、その決定に伴い、長野県上松町の木曽谷国有林と岐阜県中津川市の裏木曽国有林を御杣山と定め、それぞれで6月3日に「御杣始祭(みそまはじめさい)」、6月5日に「裏木曽御用材伐採式」が執り行われる。
式年遷宮初期の頃の御杣山は、皇大神宮・内宮(ないくう)は神路山、豊受大神宮外宮(げくう)は高倉山で、伊勢神宮の神域内だったが、良質の木材が手に入らなくなり、平安時代の1019年に行われた第18回式年遷宮から神域以外に定められるようになり、それ以降、志摩、紀伊、三河、美濃などの地方に移り、江戸時代1809年の第52回式年遷宮以降からは、木曽山が御杣山となり今日に至っている。前回の第62回神宮式年遷宮では、木曽からのご用材以外に、1922(大正12)年から植林を続ける神域内で育った間伐材のヒノキが初めて使用され、その量は全体で必要なご用材約8500立方メートルの内の、約23%を占めた。
伊勢神宮大宮司の久邇朝尊(くにあさたか)さんは「いよいよ式年遷宮の諸祭が始まるにあたり、改めてその責任の重さを痛感いたします。国家の安寧と国民の平安をただひたすら祈られるかしこき大御心(おおみごごろ)のままに、1300年にわたり国を挙げての重儀として守り続けられてきた神宮式年遷宮が、今回も民族の一大祭典としてうるわしく執り行われますよう、全国の皆様には一層のご理解とご協力を切にお願い申し上げます」と言葉を残した。
500年以上の歴史があり、伊勢市民総出で式年遷宮のご用材を運ぶ「お木曳(ひき)行事」を安全に執り行うための組織「第63回神宮式年遷宮用材奉曳(ほうえい)団連合会」と「奉曳本部」が2月11日に結成され、会長に伊勢市長の鈴木健一さんが、総委員長に伊勢商工会議所会頭の山野稔さんが選ばれた。