毎年12月に最初の浜揚げ真珠の入札会が各真珠養殖漁業協同組合単位で開催されるが、今期は約1カ月延期。さらに全国の12組合が協力し合いながら伊勢市の全国真珠養殖漁業協同組合連合会(通称=全真連、伊勢市岩渕、TEL 0596-28-4147)の場所に入札を一元化し集中させた。1月26日、その第1回目の入札会が始まった。
生産地ごとの真珠を手にとって品定めするバイヤーたちの目は真剣。
世界同時株安不況、急激な円高が、国内で生産される約半分が輸出向けのアコヤ真珠業界を震撼させた。(アコヤ)真珠が売れない――。流通・加工業者は多くの在庫を抱え換金化できずに苦しんでいるところに、今期のアコヤ真珠の入札会がやってきた。生産業者と流通・加工販売業者の話し合いの中、約1カ月入札を遅らせることになった。
「入札会」が、1年で唯一の「収穫期」にあたる真珠生産業者にとって、その収穫が1カ月延期されることは経営的に非常に厳しい状態だったが、少しでも高く購入してもらいたいために(生産業者は)涙をのんだ。
昨年までの入札会は、愛媛県や熊本県、長崎県などそれぞれの産地ごとで開催されていた。「一元化」することによって、流通・加工販売業者の移動コストの軽減、産地ごとの真珠の品質を見比べるメリットがある。
日本真珠振興会(東京都中央区)の大月京一会長は「昨今の新聞報道からも理解できるように、自動車業界や家電業界は、景気の動向を予測してラインを止めたり、レイオフをしたりして生産調整をすることができるが、真珠業界は真珠を養殖し完成させるまでに1~2年かかるためにそれができない」と指摘する。真珠は母貝となるアコヤ貝を育てるのに1年以上、そのアコヤ貝に真珠核を挿核して約1年、最低でも合計約2年がかかるため、急激な社会情勢に対応することができない現状を持つ。
全信連の三橋十九生会長は「唯一自分たちにできる『生産調整』として約1カ月間入札会を遅らせ、入札会場の一元化を今回試験的に実施した。真珠の品質はまずまずなので、今回の取り組みがプラスに働き、価格にも反映されるように」と期待する。
「『パールのような…』『真珠のような輝き…』と美しいたとえとしていつまでも形容され続けるように、『真珠』そのものの価値が損なわれないよう、生産者は品質の向上を、販売業者はさらなるイメージアップをしていかなければならない。日本が誇る唯一の宝石=真珠がいつまでも輝き続けるためにも、愛情を持って真珠業界全体の将来を見据えていかなければならない」(大月会長)とも。
この日は三重県、愛媛県、長崎県、熊本県、福井県の12組合からの3~10ミリサイズのアコヤ真珠58貫(かん)212匁(もんめ)=218.295キロが入札された。入札会は3月上旬まで続く。