テレビ番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)に出演したこともある万協製薬(多気郡多気町)社長の松浦信男さんが7月29日、自身の経験や葛藤から学んだ経営ノウハウを著したビジネス書「人に必要とされる会社をつくる」を日本能率協会マネジメントセンター(東京都港区)から出版した。
1962(昭和37)年兵庫県神戸市生まれの松浦さんは1982年、父が創業した同社に入社。1995年1月17日、阪神・淡路大震災で被災、長田区にあった同社工場は倒壊し操業不能に。そこから這(は)い上がり、1996年、現在の三重県・多気町で再スタートを切り、同時に社長に就任。奇跡の復活を遂げ、2009年に日本経営品質賞を、2011年に日本環境経営大賞環境経営優秀賞などを受賞。会社の売り上げを震災前の50倍、取引先を1社から70社に、従業員は3人から100人を超える規模に成長させた。現在、「高校生レストラン」で話題を集める相可高等学校(同)の生産経済科の高校生と一緒に企画し作ったスキンケア商品「まごころシリーズ」などが話題を集める。
松浦さんは昨年5月26日、同番組に出演した。「当初は出演の依頼を断っていたが、(司会を務める)村上龍さんに『(東日本大震災で困難に直面している人に阪神・淡路大震災で被災し困難を乗り越えた)君にしか言えないことがあるだろう』と口説かれ、出演を決めた。本書の出版はその出演がきっかけ」と振り返る。
2006年から始まった同番組は今年6月、放送回数300回を数えた。村上さんの推薦文「必要とすることより、必要とされることのほうが重要かもしれない」が同書の帯にも印刷され、アマゾンではビジネス書部門の新刊予約ランキング1位になった。
同書では、工場はまるでガラガラのボウリング場、工場の生産稼働率30%の理由。被災から学んだ災害に強い会社の作り方、被災して4週間以内に完全復活できる理由。年間1000人が三重の山奥の製薬工場を見学に、見られて組織は美しくなる――など、これまで培った経営ノウハウをオープンに説く。
価格は1,575円。全国の書店ほか、同社ネットショップでも販売する。