伊勢神宮の専用水田のある「神宮神田」(伊勢市楠部町)で9月5日、稲を刈り取る「抜穂祭(ぬいぼさい)」が執り行われた。
日本神話「天孫降臨」でアマテラスからニニギに託された大切なものは「三種の神器」と「稲穂」。年間1500以上あるといわれる伊勢神宮の祭典のほとんどが稲作に関するもので五穀豊穣(ほうじょう)を祈るもの。伊勢神宮は、日本神話からの神勅を今も継承し、人々が食べることで苦しまないように、食が足りなくて争いごとが起こらないようにと人々の幸福を日々祈り続けている。
同祭は1年の実りに感謝するもので、4月の種をまき苗を育てる「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」と共に伊勢神宮で最も重要な祭典「神嘗祭(かんなめさい)」に付属する祭典の一つ。
当初4日に行われる予定だったが、台風21号の影響を考慮し5日に日程を変更した。祭場では、小松揮世久(きよひさ)大宮司ら神職と楠部町の住民らが見守る中、山口剛作長(さくちょう)の指示で作丁(さくてい)2人が神職より授けられた忌鎌(いみがま)と呼ぶ鎌を持って神田に入り、黄金色に色づいた稲を刈り取った。刈り取った稲を10人の作丁がその場で稲穂だけを一本ずつ丁寧に抜き取り、麻緒(麻のひも)で2つに束ねて「抜穂」を作った。
神宮神田では、天候などを見ながら約1カ月をかけ全ての稲を刈り取り、数日間乾燥させ、内宮(ないくう)の「御稲御倉(みしねのみくら)」に150束、外宮(げくう)の「忌火屋殿(いみびやでん)」に108束を納め、10月15日から始まる「神嘗祭」で初めて神さまに新米をささげる。
伊勢神宮を流れる五十鈴川から引き込んだ水を使用する神宮神田の総面積は約10ヘクタール、神田の作付面積は約3ヘクタール。神田には神宮の祭典で神饌(しんせん)として使う米のほか餅や酒の原料用のうるち米ともち米を作付けしている。