志摩市とトーアス(愛知県豊川市)が3月16日、共同開発した「志摩産ヒジキのドライパック」の完成発表会を志摩市役所で行った。
レトルトパウチや缶詰などを製造する同社は1988(昭和63)年、水戻しや軽くボイルした食材を缶やレトルトパウチに詰め、食材に含まれる水分で蒸し上げるドライパック製法による食品を製造する。同製法で製造された食品は、水洗いや水戻しの必要がなく、調理の手間が省けて、そのまま食べることができるのが特長で、調理器具などが揃わない災害時の非常食や日常の時短料理の食材として販売需要が伸びている。
志摩産100%の天然ヒジキをドライパック製法により製造した同商品。付加価値の高い食品素材を商品に追求する同社と、志摩産水産物の販路拡大、漁業経営の安定化を図ろうとする同市のニーズが合致し、昨春から共同開発を行ってきた。同商品は、非常用、備蓄用や普段使い用の食品として開発したもの。
同社の岡本篤志常務は、「国内で流通しているヒジキの約90%が中国・韓国産。国内産は残りの約10%でその中の三重県産は10%強。志摩産のヒジキの年間水揚げ量は2018(平成30)年で約57トン、県内の約30%を占めている。品質が高く、味も良く、最高級品。同商品の売り上げの一部を同市の海女振興のために寄付する予定」と話す。
同席した日本栄養士会(東京都港区)常務理事、日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)総括の下村佳之さんは「災害時における栄養・食生活支援活動に関する協定を3月25日、三重県と三重県栄養士会(津市柳山津興)の間で締結した。JDA-DATは、被災地に管理栄養士を派遣し栄養指導や食生活支援を行っている。これまでの経験から災害時のストレス低減には安心・安全な食べ物の摂取が有効であることがわかっている」と説明する。
下村さんは「被災地でおにぎりなどを配布する場合、産地や銘柄を表記したものとそうでないものなら表記してあるものから選ばれる傾向がある。単純においしいということもとても重要であるが、さらに高級食材の『志摩産のヒジキ』なら、安心・安全で充実感も得られる。これまではコストを掛けない低価格の食材が基本だったが今後、被災者支援に、安心・安全で地域の信用・ブランド力のある食材が心のケアにとても効果的に働くことになるだろう」とも。
販売は、スーパーマーケットを展開するイオンリテール(千葉県千葉市)の県内19店、ぎゅーとら(伊勢市西豊浜町)の全県29店など。
内容量=50グラム、賞味期限=常温保存で18カ月、価格=194円。