伊勢で「日本一のイチゴ」を生産する「伊勢苺園」(伊勢市小俣町)に現在、2人の女性が急きょ働き始めた。
倉野佳典さんが運営する同園は、三重県農業研究所(松阪市嬉野町)開発の品種「かおり野」をメインに生産する。同園で育てた「かおり野」が昨年、一般社団法人日本有機農業普及協会(長野県伊那市)主催の「栄養価コンテスト」イチゴ部門で、総合1位となり最優秀賞を受賞、「日本一のイチゴ」の称号を得た。
2人の女性は、今年3月10日に伊勢市にオープンしたばかりのカフェ「Oisechan(おいせちゃん)CAFE」(伊勢市岩渕)の店長とスタッフ。2人は、新型コロナウイルスの影響で、オープン後1カ月たたずに臨時休業を余儀なくされ、働ける場所が無くなってしまった。そこで同店オーナーの瀬戸山祐佳さんが、2人の働ける場所として、また店舗のメニューで使っていた果物などの生産現場を知る機会になればと、農作業を手伝わせてもらえないかと、取引先の生産者に相談したところ、倉野さんが快諾し、イチゴ栽培の作業を手伝うことになった。
4月13日、14日の2日間の作業は、大きくなたイチゴの葉を間引いて、風通しを良くし、太陽の光が当たるようにすること。倉野さんは「葉を丁寧に取り除けば、それだけイチゴもおいしく育ってくれる。忙しい冬のシーズンを過ぎた4月はいつも、僕たちに疲労が出てくる時なので、葉を取り除く作業などは、したいと思いつつ人出が無いことから、なかなかできないでいた。2人が来てくれてとても助かっている」と話す。
一方、店長の松井さんは「イチゴをどのように育てているか知ることで、農家さんの大変さを理解することができる。倉野さんのイチゴがおいしい理由も納得できた。風通し良くしてあげて、元気に育ってほしいと願い、愛情が湧くようになった。コロナでお店を休業しなければならなくなったが、そのおかげでこんなに早く、生産者の皆さんがどのような思いで果物を育てているか知る機会を得ることができたので、良かった。とても意識が変わった」とほほ笑む。
瀬戸山さんは「倉野さんには、まだオープンしたばかりで何もお役に立てていないのに、快く受け入れていただき、本当に感謝している。その優しさに報いるためにもコロナが収束し、お店をオープンすることができたら、恩返ししたい」と話す。
2人は、イチゴのシーズンが終わると今度は、南伊勢町でかんきつを生産する「アサヒ農園」(度会郡南伊勢町)で働けるかを相談中。