「斎宮(さいくう)歴史博物館」(多気郡明和町、TEL 0596-52-3800)で11月7日、東京大学名誉教授の佐藤信(まこと)さんによる記念講演会「発掘が明らかにした斎宮の謎」が開かれた。
【その他の画像】斎宮歴史博物館で東大名誉教授佐藤信さんの記念講演会
国史跡斎宮跡発掘50周年を記念した特別展「斎宮と古代国家―飛鳥・奈良時代の斎宮を探る―」が開催されている同館。講演会は同展の関連事業の一環で、当初10月10日に開催予定だったが台風14号接近のため日程を変更した。
「斎宮」の発掘調査は、1969(昭和44)年の明和町古里地区(現在の斎宮歴史博物館周辺)の団地造成計画による現地調査の結果、遺跡であることがわかり、1970(昭和45)年から本格的な調査が開始された。1971(昭和46)年に掘立柱建物が建っていた跡や平城宮や太宰府など宮殿や官衙(かんが)のあった場所から出土する、役人が文字を書くための硯(すずり)「蹄脚硯(ていきゃくけん)」の一部や、赤い土で焼いた全長約30センチの馬の形をした焼き物「朱彩土馬」などが発見されたことから、さらに調査を進め現在に至っている。
講演会では、発掘調査50年間で約140ヘクタール東西2キロ、南北700メートルの範囲に及ぶ碁盤目状の区画で構成される大規模な方格街区(地割)の存在をもとに、平安初期に書かれた歴史書「続日本紀(しょくにほんぎ)」や平安時代の法令集「類聚三代格(るいじゅうさんだいきゃく)」「延喜式(えんぎしき)」などの記述からどれくらいの規模だったかをわかりやすく説明、また出土品から都の文化を取り入れていた可能性があることなどを解説した。
佐藤さんは「奈良時代の(平城京の中の)平城宮で約120ヘクタール。斎宮はそれよりも大規模な約140ヘクタールであることからも、日本史上特異で重要な役割を担ってきたことがわかる。『幻の宮』とされていたが、50年間の発掘調査で幻ではないことが明らかになった。『延喜斎宮式』によると、斎王に仕える斎宮寮の官人(今の国家公務員)が26人、番上と呼ばれる交替で勤務する人が101人、女官(命婦(みょうぶ)1人、乳母3人、女孺(にょじゅ)39人)43人など計520人が斎王に仕え生活していたと考えられる。日本を代表する遺跡であることがその規模からりかいできるが、まだまだわからないことばかり」と話す。
同館学芸普及課の天野秀昭さんは「これまでの発掘調査では史跡東部の斎宮最盛期であった平安時代に整備された南北に方格地割された史跡が注目されてきた。2016(平成28)年から史跡西部の発掘調査で東に約33度傾く遺構を確認し、飛鳥~奈良時代の斎宮成立期の様子が少しずつわかってきた」と説明する。
佐藤さんは「学際的な調査、研究対象として斎宮と、発掘調査や研究成果のさらなる展開と発信として発掘調査に関わった人が直接現地で案内するツアーを企画するなどソフト面の充実が必要」と提案する。
11月14日には、学芸員による展示解説会(14時~14時45分)、11月21日には、史跡斎宮跡第199次発掘調査現場(多気郡明和町竹川字中垣内)公開(9時~12時、13時~16時)を行う予定。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館(祝日・休日除く、祝日・休日の翌日は休館、12月29日~1月3日休館)。企画展入場料は、一般=400円、大学生=320円、高校生以下無料。常設展入場料は、一般=340円、大学生=230円、高校生以下無料。常設展示観覧とのセット料金は、一般=700円、大学生=510円、高校生以下無料。 国史跡斎宮跡発掘50周年記念特別展は11月23日まで。