伊勢志摩最高峰・標高555メートルの朝熊(あさま)ヶ岳の山頂に立つ朝熊岳金剛證寺(伊勢市朝熊町岳)で6月27日~29日、同寺を復興させた仏地禅師の命日を偲ぶ「開山忌」が開催されている。
【その他の画像】開山忌の時にしか販売しない幻の餅「茶の子餅」
臨済宗南禅寺派の別格本山の同寺。欽明天皇時代(540年~)僧・暁台(ぎょうだい)上人が開山したと伝わる。平安時代、825(天長2)年に弘法大師空海が真言密教の道場を開き中興するも、その後衰退。1392年に建長寺(神奈川県鎌倉市)71世の仏地禅師・東岳文昱(とうがくぶんいく)が再興し、真言宗から臨済宗に改宗し、現在に至る。毎年、禅師の命日の6月29日に「開山忌」が開かれる。
「伊勢神宮の奥の院」「伊勢神宮の鬼門(北東=丑寅)を守る寺」としても知られる同寺は、伊勢音頭の一節に「お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り」と詠(うた)われ、地元の人たちは、「岳(たけ)さん」と親しみを込めて呼ぶ。身内が亡くなると「塔婆(とうば)・卒塔婆(そとば)」を立て同寺を参る「岳参り」を行なう。近年は核家族化などが原因でその風習も廃れつつあるが、「開山忌」には毎年参拝者で賑わっている。
同寺の奥の院「呑海院(どんかいいん)」では、塔婆供養するための受付に行列ができ、先祖の名前が書かれた塔婆の前では手を合わせる参拝者が線香を立てる。一休禅師が朝熊岳に登った際、奥の院富士見台から富士の遠景を眺め、「海を呑む 茶の子の餅か 不二の雪」と詠んだ。
一休禅師も口にしたであろう「茶の子餅」を、100年以上の歴史を持ち今も「呑海院」の前で店を開く「富士見亭竹屋」(伊勢市朝熊町岳)の創業者が「茶の子」から抹茶を餅に混ぜ、餡(あん)をその餅で包んだ「茶の子餅」を考案し販売。かつては毎日販売していたが、現在は「開山忌」に合わせた4日間限定で販売する。
2代目先代の妻の竹内民子さんは1933(昭和8)年生まれの現在88歳で、今も現役で店に立つ。竹内さんは「5年前に心臓の病気をしたが克服し、今年転んで足の骨を折ったが、リハビリで快復し、今もこうして元気でお店に立つことができている。これもひとえに仏さんのおかげ」と手を合わせる。
竹内さんは「開山忌になると、孫やひ孫がみんなで手伝いに来てくれるのが何よりうれしい。『茶の子餅』は、開山忌の時にここまで来てもらわないと買ってもらえないのが心苦しいが、ご先祖さまへのお参りのついでに立ち寄っていただければ」とほほ笑む。
「開山忌」には、観光有料道路「伊勢志摩スカイライン」の開門時間を2時間早く5時からとし、三重交通(津市中央)は臨時バスを出す。
観光有料道路の通行料金は、自動二輪車=900円、軽・小型・普通自動車=1,270円。開門時間は7時~19時(8月は20時まで)。「茶の子餅」の価格は15個入り=800円、5個入り=300円。「富士見亭竹屋」の営業時間は9時~16時30分、水曜定休。