ビジネスの手法を活用し地域の課題を解決しようと取り組む高校生が全国から集まり8月17日・18日、皇学館大学(伊勢市神田久志本町)で「全国高校生SBP交流フェア~学生の学生による学生のための祭典~」が開催された。主催は「未来の大人応援プロジェクト実行委員会」。
昨年から文部科学省との共催となった同祭典。2016年から始まった第1回は11団体、2017年第2回は24団体、第3回となった今年は30団体が参加した。前身は、多気郡多気町で2013年から2015年に行われた「全国高校生“S”の交流フェア」。
SBPとは、ソーシャル・ビジネス・プロジェクトの略で、高校生が、ひと、モノ、自然、歴史、名所旧跡、産業など地域の資源に目を向け、学び、見直し、活用し、まちづくりを意識しながらビジネスの手法を活用し、地域を元気にしていこうとする取り組みで、その取り組みを地域で応援し支えていこうとする活動。相可高校(多気郡多気町)食物調理科の高校生が運営する高校生レストラン「まごの店」の成功事例にならい、南伊勢高校南勢校舎(度会郡南伊勢町)の生徒たちの取り組みをきっかけに、全国の高校生たちにその活動の輪が波及し、毎年同祭典が開かれるようになった。
初日は、自分たちの活動を審査委員にポスターで説明するポスターセッションが行われその後、伊勢銀座新道商店街(伊勢市)に会場を移し、高校生たちが作った商品やその場で調理した菓子の販売のほか、皇学館大学生のグループや地元企業などがブースを出店する「夜の市」(約43ブースの内24団体が高校生のブース)が開かれた。
2日目は、レオパレス21(東京都中野区)による「エコキャップアート制作」、アドビシステムズ(東京都品川区)による「出会いをテーマにしたオリジナルトートバック作り」、ゲイト(東京都墨田区)と未来教育デザインConfeito(東京都北区)による「SDGsを知るカードゲーム」、同実行委員会による「PR動画作成講座」などのワークショップや、前グーグル日本法人名誉会長の村上憲郎さんによる「グローバル時代を生き抜く」と題した講演会が行われた。
ポスターセッションには22団体がエントリーし、仙台商業高等学校(宮城県仙台市)商業情報部、浜松学芸中学校・高等学校(静岡県浜松市)はままつ胸キュンプロジェクト第4弾、中部大学春日丘高等学校(愛知県春日井市)インターアクトクラブ、高浜高等学校(愛知県高浜市)高浜高校地域活動部SBP、相可高等学校(多気郡多気町)生産経済科NPO法人植える美ing、南伊勢高等学校南勢校舎南伊勢高校SBP、沖縄県西原町内の高校生NS2BP(西原町学生ソーシャルビジネスプロジェクト)の7校が次のオーラルセッションに駒を進め、その結果、 浜松学芸中学校・高等学校の「浜松注染(ちゅうせん) 浴衣プロジェクト」が文部科学大臣賞に選ばれた。
同校は、ポスターやフォトブックなどで浜松の魅力を発信する「胸キュンプロジェクト」の活動展開。その活動を知った地元の浴衣メーカーの「白井商事」(浜松市)から浴衣の魅力を発信してほしいと依頼を受けて、ポスターやカタログなどを制作、浴衣生地で作ったシャツブランド「美縒(びより)」などを企画したことが高く評価された。
三重県知事賞には、障害者施設や高齢者施設など年間300施設に出向いて施設利用者らとコミュニケーションを取り笑顔になってもらう中部大学春日丘高等学校の「IAC(いっぱいありがとうカンパニー)」が選ばれた。
審査委員の藻谷浩介さんは「夜の市で高校生が作る『○○焼き』など、全部食べたがどれもおいしかった。地域の特色であったりアイデアがつめ込まれている。特に味と生地が圧倒的においしかったのは南伊勢高校の『たいみー焼き』」と賞賛する。「ビジネスをしているがそれが目的になっていないで、何が目的なのかをしっかりと理解していること、自分たちの頭で考えて行動していることがすばらしい。三重県から始まった取り組みが全国に広がっているが、三重県の高校の参加がまだまだ少ない。三重県の高校生たちも静観せずに積極的に参加してほしい。今回は地方の進学校の生徒たちが参加してくれたことが新たな流れとして注目したい」とも。
文部科学省生涯学習政策局参事官、連携推進・地域制作担当、地域政策室長の伊藤史恵さんは「高校生たちの交流の広がりと活動の深さを感じる。昨年の参加校や自治体関係者にアンケートを取った結果、高校生の成長、地域への波及の効果がある、卒業後も地域と関わりたい、地域に残りたいと思う生徒が数多くいたことがデータとして示された。さらにこの交流が全国に広がるように後押ししたい」と話す。