「的矢かき」の養殖・販売を手がける「佐藤養殖場」(志摩市磯部町)が6月18日、カキの養殖過程で発生するカキ殻を活用して栽培した酒米を醸して作ったオリジナル日本酒「純米吟醸 的矢廻(まとやめぐり)」の数量限定発売を前に、完成発表会を開催した。
志摩の佐藤養殖場、カキ殻で作る酒米で日本酒 海から生まれた恵みを大地へ
同プロジェクトは、毎年大量に廃棄され産業廃棄物となるカキ殻を資源として再利用し、海から生まれた恵みを大地へ還(かえ)す「里海・里山循環」の試み。長年黒潮の大蛇行による斃死(へいし)や処分コストに頭を悩ませてきた同社が、カキ殻の持つ土壌改良・肥料効果に着目して始動した。カキ殻を1年間雨風にさらして塩分を抜き、鳥羽市のリサイクルセンターで粉末状にしたパウダーを田畑にまくことで、根が太く強い作物を育てる土壌づくりに成功。山や田畑に降った雨が豊かな栄養を含んだ水として再び的矢湾へ流れ込み、将来の沿岸養殖にもメリットをもたらす持続可能な資源循環モデルの構築を目指している。
日本酒の醸造には、伊賀の酒蔵「大田酒造」(伊賀市上之庄)が協力。カキ殻を原料とした肥料を用いて栽培した三重県の酒造好適米「神の穂」を100%使用した。的矢かきならではの爽やかな甘みを邪魔しない風味に仕上がっており、過去に志摩で稲作を行う前田俊基さんと共に作った日本酒「半蔵 志光(しこう)」は「全国燗酒コンテスト」で最高金賞を受賞するなど、専門家からも高い評価を得ている。
今年からは、地域が抱える「高齢化による休耕田の増加」という課題解決をさらに推し推し進めるため、建設土木業者「出馬重機」(志摩市阿児町)との新たな協働を開始した。重機や土地整備のノウハウを持つ異業種の参入により、長く活用されていなかった休耕田を再び耕し、志摩市穴川の約1ヘクタールに及ぶ規模で神の穂の新たな作付けを実施。これまでの前田さんの0.5ヘクタールの水田と合わせ、計1.5ヘクタールへと規模を拡大した。
耕作放棄地の再生は、泥水のダイレクトな流入(土砂流出)を防いでろ過する機能を田んぼに果たしてもらうだけでなく、海の生態系に極めて重要な「フルボ酸鉄」などの栄養塩をバランスよく徐々に海へと供給する役割も担う。今回は、水産業、農業、酒造業に加え、建設業というパワーを持つ異業種パートナーの手によって地方創生を目指す新たな意義が加わった。
同社の濱地大規社長は「小さなスタートではあるが、伊勢志摩地域を舞台にしたこの取り組みで必ず大きなうねりを作ろうという決意がある。100年後の後輩たちにもおいしいカキを作ってもらうため、3年後には5ヘクタールへの拡大を目指し、持続可能な環境づくりを進めていきたい」と意気込みを語る。同社では酒米のほか、カキとの相性が抜群なレモンの栽培(現在300本)にも注力しており、将来的には「ガストロノミーツーリズム」を視野に入れた観光資源としての展開も目指す。
「純米吟醸 的矢廻」は720ミリリットル入り、価格=2,900円。初回限定700本。同社の直売所、ホームページのほか、商業施設「VISON(ヴィソン)」(多気町)内の「旨いもん広場」などで順次販売する。