これまで沖縄を拠点に事業展開していた「潜水艇」の開発・製造・販売を手掛けるベンチャー企業「ディープシープランニング」が志摩市内に事業所を開設し、生産工場を置くことを決定。同社は、8月10日、同市の地域産業活性化とマリンテック(海洋先端技術)の推進に向けた企業立地協定を同市と締結した。
「潜水艇」の開発・製造・販売を手掛ける「ディープシープランニング」と志摩市が企業立地協定締結
同社は、親会社でアジア初の潜水艇メーカーである「アミューザジャパン」(東京都調布市)の技術と知財を継承し、有人潜水艇の製造・販売のほか、海洋調査・研究、水圧を利用した特産品(食品)の「深海熟成」事業などを展開する予定。
同社が扱う潜水艇は、個人用エントリーモデルで2人乗りの「P-1」、3人乗りの「S-1」(共に100メートルまで潜水可能)、観光や海中探査に向けた最大深度500メートルまで潜水可能な6人乗り多目的モデルの「C1-M」などで、販売価格は1艇5億円~10億円。今年中に生産工場の稼働を目指し、初年度は指導員を含めて約5人の人員からスタート。毎年5人以上ずつ増員していく方針。地元の若い世代や工業・水産高校出身者への技術継承・インターンシップなども視野に入れる。
開発拠点として同市を選定した最大の理由は、同市が今年4月に開設した「志摩市マリンテック等実証ワンストップセンター」の存在だ。山本敬社長は「行政のワンストップセンターにより、許認可などの諸手続きが1カ所で完結できる点は、スピード感ある事業展開を求めるスタートアップにとって非常に魅力的」と強調する。
さらに、立地の優位性について次のように語る。「英虞湾(あごわん)という波が穏やかな閉鎖性海域が目の前にあり、試験・開発の環境として最適であることに加え、そのすぐ外側には深海を有する太平洋が広がっており、実証実験から深海調査まで幅広い用途に対応できる。沖縄県で長年工場を運営してきた経験を踏まえ、台風などの気象条件に左右されにくく、安定的な試験環境が確保できる点も志摩市の大きな強み」。また、「持続可能な事業展開に欠かせない人材確保の面でも、伊勢志摩地域は三重県立水産高校、鳥羽商船高等専門学校、三重大学など、工学系・水産系に強い専門教育機関が多く、若い人材を確保しやすい環境がある。最先端の潜水艇技術を次世代に継承し、志摩市から新しい産業を創出したい」と意気込む。
締結式に同席した、元JAMSTEC(海洋研究開発機構)で有人潜水調査船「しんかい6500」の開発リーダーを務めた海洋工学の第一人者・高川真一会長は、「志摩の美しい多島海やリアス式海岸の環境に感銘を受けた。森と海が連動して元気なこの場所で、多くの人に海を直接観察してもらえる環境を整え、海から元気をもらえる仕組みを広げていきたい」と話す。
今後は、潜水艇の製造拠点の整備に加え、市民や観光客が製造工程を見学できる「アトラクションファクトリー」や潜水艇の博物館開設なども計画しており、海洋レジャーを通じた観光活性化も視野に入れる。
志摩市の橋爪政吉市長は「マリンテックの実証とスタートアップセンターの開設は、英虞湾をはじめとする志摩の豊かな海を舞台に、最先端の技術を持つ企業とタッグを組み、この地域から世界へ海洋技術を発信していく強い思いの表れ。国も海洋技術への投資強化を掲げており、国家戦略としても重要なポジションを担う同社と連携し、サポート体制を充実させていく」とエールを送る。