伊勢市河崎の古い町並みが残る一角に8月17日、松阪肉をメインに肉料理を提供する「肉割烹(かっぽう) 橙世(とうせ)」(伊勢市河崎、TEL 0596-63-8622)が明治元年に建てられたという古民家を改装してオープンした。
伊勢・河崎の町家を改装し松阪牛すき焼きや希少部位コース提供する「肉割烹 橙世」
オーナーシェフの東瀬隆資(とうせたかし)さんは富山県出身の53歳。20歳で料理人の道に入り、約1年間イタリア・フィレンツェでの修業や東京・丸の内のレストランでの勤務を経た後、飲食店の業態開発・プロデュースに約10年間携わった。2012(平成24)年に志摩市のリゾートホテル「NEMU RESORT」のかつて同僚だった川埜悟料理長から誘われ、副料理長として三重へ移住。その後独立し、伊勢市内で焼き肉店を約6年間にわたり営み、これまでの経験を生かして、純和食仕立ての肉かっぽうとして同店を開いた。
店舗は、かつて金物店を営んでいたという「玉田屋」の屋号で親しまれた築150年以上の町家。鬼瓦には「玉」の文字がはっきりと意匠化されて今も残っている。土間だった空間を厨房(ちゅうぼう)に、居間だった部屋を板張りに変え、カウンター6席に改装し、歴史ある梁(はり)や柱の風合いを生かした落ち着きのある空間に仕上げた。奥にも1部屋、2階にも部屋が昔のまま残るが、時期を見て改装できればという。
提供するのは、「厳選」した松阪牛を中心とする「おまかせコース」(1万6,000円)のみ。一般的に流通が難しいとされる松阪牛のタンやハラミを、安土桃山時代に千利休の指導を受けて京都で始まった伝統的な楽焼の一種「赤楽焼(あからくやき)」の焼き台で香ばしく仕上げる炭火焼きをはじめ、赤身の希少部位「ラムシン」のたたき、客の目の前で最適な火入れを行う特製割り下のすき焼きなど、全14品を提供する。締めには土鍋ご飯、甘味には日本酒で炊いたイチジクのコンポートやアンズとクルミの自家製ようかんなどが並ぶ。
東瀬さんは「東京での激しい競争や店舗プロデュースの日々を経て、伊勢志摩の地に腰を据え、料理人として本当に納得のいく一皿と向き合いたいと思い開業した。店名は、自分の苗字(東瀬)に、先人が積み上げてきた歴史や文化を代々(橙)受け継ぎ、謙虚に商いを後世へ続けていくという思いを掛け合わせた。河崎の歴史ある建物を引き継ぎ、先人への敬意を込めて料理と向き合いたい。世界に誇る松阪牛も代々の生産者の方々が築いてこられたもの。その看板をお借りする以上、過度な小細工はせず、板前としての確かな火入れと純和食の手仕事で、その魅力を最大限にお届けしたい」と話す。
営業時間は17時30分~、19時30分~の2部制(完全予約制)。日曜定休。