皇学館大学(伊勢市神田久志本町)教育学部と教育学会による講演会「古事記と宇宙-時空を超えた知の旅-」が5月23日、同大で行われ、学生や市民らが最先端の科学と日本神話が融合した世界観に耳を傾けた。
伊勢・皇学館大で「古事記と宇宙」講演会 数理教育コース開設記念で
同大が2023年度に開設した数理教育コース(理科・数学の中高教員免許が取得可能)の設置などを記念して企画された同講演会。第1部では、京都大学名誉教授の柴田一成さんが科学と哲学・神話の融合を試みる趣旨で登壇。音楽家・喜多郎さんのアルバム「古事記」の楽曲に合わせ、138億年前のビッグバンや太陽系の誕生、星の生と死などを最新の宇宙映像と共に天文学の基礎と宇宙の歴史を解説する天文学入門「古事記と宇宙」を披露した。
続いて行われたパネルディスカッション「予測困難な状況への対処と学び」では、柴田さんと京都大学名誉教授で同大特命教授の大野照文さんが登壇。大野さんは柴田さんとのこれまでの活動を振り返り、「目標さえしっかり持っていれば、予測不能な状況でも試行錯誤を通じて到達点が見えてくる。健全な疑問と好奇心を持つことが新たな学問につながる」と言及。柴田さんも「100の挑戦のうち成功するのは1つか2つだが、諦めずに時間をかけてやり続けることで実現に近づく」と訴えた。
議論の中で柴田さんは、最先端の天文学の進展により、地球に似た惑星の発見が相次いでいることから、今後30年以内に電波等を通じて宇宙人(知的生命体)の存在が確認される可能性があると言及。同時に、人類が自滅せず平和を維持するためのヒントを物理学者スティーヴン・ホーキング博士が晩年に「地球外生命体の襲来に備えて地球防衛軍を作るべきだ」と提言したエピソードを紹介。「地球人同士で戦争をしている場合ではないという危機感を持たせ、共通の課題に向き合うことで地球全体の平和を維持しようとしたのでは」とホーキング博士の平和観を読み解き、古事記の解釈を交えた宇宙的な視点から戦争のない平和な社会を築くことの重要性を訴えた。
これからの時代における「挑戦と試行錯誤」や感性を働かせる学びについて熱い議論が交わされる中、会場に参加していた同コースの1期生である4年生の学生3人に話を聞いた。
田邊俊博さんは「(古事記と宇宙というような)一見関係のない異なる分野をつなげることで新しい価値や考え方が生まれる。学校の勉強と生徒の心の育成をつなげることで、新しい教育のあり方が生まれると感じた」。硬式野球部の坂下将斗さんは「人がやったことのないことに率先して挑戦することは、先人が進んだ道をなぞるのではなく、自分がその道の先頭に立つ『先駆者』になるということ。新しい挑戦には数多くの失敗が伴うかもしれないが、挑戦することでしか得られないかけがえのない学びや気づきがある。ここで得た挑戦の精神と学びを、今後の人生やこれからの歩みに深く生かしていきたい」。長谷川怜哉さんは「高校までは引っ込み思案だったが、多くの新しい挑戦を重ね、今ではかなり積極的な性格へと変化した。開設4年目のコースの先駆者として、将来は数学・理科の教員となり、皇学館大学から新しい可能性を発信したい」と力強く語り、学生たちはそれぞれの未来を見据える。
閉会のあいさつに立った中條敦仁(あつし)教育学部長は、同コースが目指す教員像について「単なる教科の専門家ではなく、児童・生徒の心に寄り添い、遊び心を持って失敗を恐れずに学び続ける存在」。「当大が大切にする『心の教育』を土台に、論理的思考とクリエーティブな想像力を兼ね備えた教員を育てたい。やったことがないことに、この皇学館で一緒に挑戦しよう」と高校生や在学生にエールを送り、文理融合の重要性を訴えた。