「大麻(たいま・おおぬさ)」と呼ぶ伊勢神宮のお神札(ふだ)のご神体となる用材を神宮林から切り出す「大麻用材伐始祭(たいまようざいきりはじめさい)」が4月16日、伊勢神宮の森の中の丸山祭場(伊勢市宇治今在家町)で行われた。
【その他の画像】神宮の森から大麻の元となる用材を切り始める祭典
「山笑う」新緑美しい神宮の森「神路山」を正面に見る同祭場で同祭典は厳かに行われた。祭典は、神様に神饌(しんせん)を奉納し、作業の安全を祈願する祝詞(のりと)を奏上し、素襖烏帽子(すおうえぼし)姿の小工(こだくみ)が神路山に向かってオノを3回振り下ろした。
大麻は、「御真(ぎょしん)」と呼ぶご神体を和紙で包み中心に納めたもので、神棚などに祭る伊勢神宮のお神札のこと。御真は、切り出した木材を製材し半年間、風雨にさらしヤニを取り、乾燥させ、厚さ約1ミリの木地に加工し丁寧に和紙で巻いたもの。1年間に約1000万体の大麻を奉製し「大麻修祓式」でお祓いをした後、9月17日に行われる「大麻暦頒布始祭」において、神社本庁を通じて47都道府県から集まる各神社庁長へ渡され、全国各地の氏神を祭る神社に頒布され各家庭に届けられる。
伊勢神宮の大麻は、大きく分けて直接授与する「授与大麻」と全国の神社に頒布される「頒布大麻」の2種類。内宮と外宮にそれぞれ「天照皇大神宮」「豊受大神宮」と書かれた「角祓(かくはらい)」「大角祓い」「剣祓(けんはらい)」の3種類6体と海上安全大漁満足を祈願する「海幸大麻」がそれぞれ1体づつある。また14の別宮にもそれぞれの宮名の「剣祓」1体づつがある。
「頒布大麻」はかつて、伊勢神宮への参詣者を全国から呼び込み案内などをしていた御師(おんし・おし)が、新しい神札や暦(こよみ)を持って全国の崇敬者に頒布していたもの。江戸時代後期の安永年間には、全国世帯の約9割が大麻を受けていたという記録も残る。