20年に一度、伊勢神宮の社殿建て替えで使用される御用材を運び入れる「第63回神宮式年遷宮 御木曳(おきひき)行事」が5月9日、伊勢市内で始まった。初日は外宮(げくう)へ向かう「陸曳(おかびき)」が行われ、多くの「神領民(しんりょうみん)」(伊勢市民)が威勢の良い掛け声とともにヒノキの巨木を曳き進めた。
御木曳は、新しい社殿の柱となる御用材を神域へ奉納する伝統行事で、室町時代から550年以上続くとされる。かつて神宮の領地に住み、遷宮を支えた神領民の奉仕が起源となっており、現在は国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」にも指定。明治以降、遷宮が国の管理下となった時期も、神領民の強い崇敬心により民俗行事として守り抜かれてきた。
初日となった9日は、出雲町誠義会、中島豊流団、徳川山、辻久留町の4奉曳団(ほうえいだん)が登場。約3000人の参加者が、宮川で清められたヒノキ10本を奉曳車に載せ、外宮までの約2キロの道のりを練り歩いた。宮川に設置された「どんでん場」では、巨大な奉曳車を豪快に前後に揺らし水を切る様子が披露された。中でも、辻久留奉曳団に託された御木は長さ約7.2メートル、末(すえ、細い方)の太さ約56センチ、元(もと、太い方)の太さ70センチ以上と他の団の御木と比べても断然大きく、御木を水で清めるために宮川の川の中まで曳く際、そりが砂にはまって一時動かなくなるハプニングもあったが、「エイヤ」と力を合わせて難を乗り越えた。
今回の行事は2026年と2027年の2カ年にわたり執り行われ、宮川から外宮へ奉曳車で向かう「陸曳」に加え、五十鈴川をさかのぼり内宮(ないくう)へ運ぶ「川曳(かわびき)」も行われる。全72団が参加し、2年間で延べ約17万人の参加を見込む。昭和期に始まった「特別神領民」制度により、全国の崇敬者も外宮領の陸曳に参加。地元住民と全国の崇敬者の力が合わさり、内宮・外宮合わせて約180本の御用材が運ばれる予定となっている。